ジグ日記 | 出版舎ジグ

編集ってケアにちかい、のか

(つづき)

編集ってケアに近い。のか?
その1
玄関扉が半開き、幼児がしゃがんで泣いている。幼児の母の怒鳴り声が聞こえる。
「出ろっつってんだよ」
「てめえが言ったんだろ」
「ほら、早く出ろよ」
ふだんはこんな言葉遣いをしないのに、怒りが止まらなくなると、とことん口汚くなる人は、結構いるものだ。幼児は、やあだ、やあだ、やあだ~と大泣きするのみ。

事態の原因は、まずは、わからない。
幼児の何かが母=彼女の怒りに引火したのだろうから、ともかく、いったん,両者は距離をおいたほうがいいよね。母もそのつもりなのか。でも、幼児をひとり戸外に出すのはまずい。
「どうしたんですか?」とまず戸口に向かう。
そして、こう切り出した。
「ちょっとクールダウンした方がいいかも。お子さんしばらく私が見てますね、部屋の外にひとりでいるのはよくないから。」
彼女の応答。
「それじゃだめです、この子遊んでもらっちゃうから、だめです」
以下応酬。
「じゃあ、遊ばないで、ただ一緒にいることにしますから」
「ぜったいにこの子、遊んじゃうんで、だめです」
「でも外にひとりにさせるのは、まずいですよ…」
「じゃあ、家で怒鳴ってればいいですか。家の中ならいいんですか」
「すこし、離れるほうがいいですよね。だからお母さんと別々に…」
「何してくれるっていうんですか」
「……」
「いったい、何してくれるっていうんですか」

これにどう応答するのが正解だろう?
そうだよね、気遣ってるふうに割り込んでこられて、嫌だったろうなあ。
その嫌な気分ふくめて、思っているなにかしらを、吐き出して欲しいな、と、まずは思った。
ので、低姿勢(「私なんてたいしたことは出来ないんですけれど…」とか)をやめてみた。
顔をしばし無言で見つめ、たいらなトーンで問いかえしてみた。
「それは、どういう意味ですか?」

いま考えると変則技すぎたかもしれない。
「わかんねえのかよ、てめえで考えろ」とか
「どういう意味ってどういう意味だよ?」とか、言われそうだ。

(そのときはそういう台詞が出て、さらに激怒させてしまうことも想定していた。子への怒りが、いったん別方向に向き変わるから)。

「何してくれるっていうんですか」は
• どんな解決策があるというのですか/ないですよね?
• 私が何を必要としているか、わかっているのですか/わかってないですよね?
を意味するだろう。
それに「どういう意味ですか」と返せば、論の流れから――口に出さなくても、下記の思いにつながっていくだろうと思っていた。

• 私が抱えている問題は(*****なのだが)、あなたに解決できるとは思えない
• 私がしてほしいことは(****なのだが)、あなたはそれをわかっていない

結果、****(泣いている子ではなく)に思いの焦点があたる、と私は漠然と考えていたのだろう。ところが、彼女はこう返してきた。

 


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