編集ってケアに近い。のか? その2
ドアをあけ、目に入ったのは白い空間。部屋全体が白で埋まっている。
白いのは、すべて、レジ袋。
まるめた使用済レジ袋、折り重ねた未使用のレジ袋、ゴミが入ってるレジ袋、なぜか買いだめの未使用の同じ商品がいくつも入っているレジ袋等、たぶん総計100~200はある。
床は見えない。小型冷蔵庫の上、何かが入っている段ボール箱の上。
プラケースの上も白いレジ袋。窓の光でレジ袋が鈍く光り、部屋は白くほの明るい。
段ボールやプラケースが壁に並び、その周りにレジ袋が並び、縦にも横にも体を伸ばして寝ることは、とてもできなさそう。だから腰が痛いんだ。
もう出たい、と言い続けては気がくじけ、思ってたんと違う、不便で無理、保証会社に断られた。今度こそ? 片付け手伝ってと言われて、はじめて訪問する朝、駅からの道を歩いている私のスマホに、「やっぱ無理だから止めます」とメッセージが来た。
説得したり、なだめたり、代案を出したり、なんでうまくいかないのか理由を訊いたりしては(私が)失敗してきた(本人にとってはたぶん失敗ではなく、方針転換した)ことを思い出しつつ、こう返信した。
「じゃあ、もう帰るね」
ほんとうは、どうしたいんだろう?
「やっぱ、やめたい」のか。
どうしたらいいか分らなくなった?
「どうしたらいいかな?」と誰かの知恵を借りる、ことを思いつかない?
そういう相手がこれまで、いなかった?
相談してうまくいった経験がない?
たぶん全部。
「相談」って、つまり何をすることなのかを知らないのかもしれない。(かくいう私も知らないかもしれない。)
どう応答すべき?
「やっぱやめます」に「そんなこと言わないでがんばろう」と応答したくない。だって、別にがんばらなくてもよいのかもしれない。
やっぱやめる、という先方の気分に、こちらもあわせてみよう。
「なら、今日は帰るね」
帰ってきた応答は
「近くまで来たんなら、話、聞いてってくださいよ」
そうか、じゃあ話、聞きます。
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