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どら猫マリーのDV回想録 その4

プレイバック・パンデミック・パニック(続)

近しい人が死んだ。中学・高校の同級生。別に仲はよくなかった。でも私にとっては日常の大切な風景のひとつ。あの女優さんも同世代。生きているって奇跡なんだ。本当に。
それを教えてくれたのは、元夫君なのだから、悲しい。
気が付けば4年が経とうとしていて、あの日々がどんどん過去になる。
うなされることも思い出すこともなくなってきて、ある日、ここに何も書けない自分がいて、愕然とした。風化している。風化は回復。回復は風化。

でも人生は面白いもので、そんなときに手紙が届く。元夫から? いえいえ、自治体から。
手当をもらっている以上、色々と「今」について報告の義務がある。

手紙の色はいつでもカラフル。年度ごとに色が決まっていて、今年はオレンジ。図工室で見かけた、少し厚みのあるA4用紙。

そこではたと気づく。
「配偶者の有無」だ。とりあえず1年前に遺棄の申請をした。私は晴れて、一人親になったわけで、泣きながら帰ったあの暑い市役所からの道を思い出す。
……ということは、「いない」の?「いる」の?

私は、しぶしぶ、あの親切で無機質な人たちに電話をした。
事情はかくかく、しかじかです。えっと申請したのは1年前で……。
言いたいことを整理しようとするけれど。言いたいこと、は言うべきこと、なのだけれど。
分かってほしいことが多すぎて、滑り落ちてゆく。
頭の中は段ボールでぐうぐう寝ているあの2匹の子猫の図でいっぱい。

そうこうしているうちに電話は繋がってしまった。担当部署へ転送、また転送で、つながるべき課の名前が異なるとかで、優しく教えてもらう。
「子ども家庭部ではなくて、そちらは家庭支援課の……」うーん、違いが分からない。
先方様もささやかな沈黙を感じ取ってくださったらしく、とりあえずそれっぽいところに再度つないでくださる。イライラした感じは全くない。むしろ、分かりづらくてすみません、くらいで。やがて転送ボタンを押したらしく、その親切なひとは途中でいなくなった。

「はーい! マリーさまですね! 粋です!」

は? 粋?
確かに最近、きれいになったと言われているけど、
そんな、このタイミングで言われると…と、思考が停止する
もしもし?
「はい、マリー様、はい、ご事情は伺っております。ですから、配偶者のところは“遺棄”。はいっ! い、き!」

あーそういうことか。最初に伝えた生年月日やらで、もうここまでわかってしまうのだ。
配偶者の欄には手書きで「遺棄」と書け、ということらしい。
ほめられたのではなかった。屋根から庭の木へジャンプ! と思ったらおっとっと……
柿の木から猫が落ちるところ、想像してください。

「ひらがなでも、カタカナでもいいので^^ はーい、おねがいしまーす、はーい!」

といって、電話は切られた。


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