どら猫マリーのDV回想録 その6
魔除けの指輪(話は少し、さかのぼる)
「魔除けの貴金属」は、祖母の形見の純金ネックレスに替わり、ハイネックの陰にかくれて私を守ってくれている。そういうとかっこいいけれど、これ、たぶん日本直販とか、ドラマの合間にやってるやつを勢いで買った祖母が、同居する従兄弟たちや叔父にみつかるのがまずくてしまい、隠した代物だ。
祖母が亡くなって同型の純金ネックレスが何本も見つかって苦笑した。そのひとつを私がもらったのだ。95年生きた祖母の、ささやかなときめきの欠片である。
自宅に着くと、夕飯がオムライスだったのだろう、ケチャップでべたべたな2人が迎えてくれた。毒親の毒牙も徐々に薄れた母が、「いいのに」と言いながら有名タルトの詰め合わせを受け取った。早く実家を離れたい。でもこういうときは、実家に頼らざるを得ない。
と、そこで私はものすごいものを見つけてしまった。母の中指に輝くもの、それはまさに、あの日私がはめるのをあきらめた、あの指輪だったのだ。そのほかにも3つ。シンプルなものは重ねてつけられるからべんりだ。
あれっ?と私。
あら、ばれちゃった?と母。
それ、私がサイズ変更のために預けただけで、別に差し上げたわけじゃないんですけど……
とりあえず試験も無事終了したし、久しぶりのデパ地下スイーツでコーヒーを飲もう。そんな余裕が私と母にあるのも2匹が大きくなったから。
エリーも来年には1年生になる。
ほどなくして、東京郊外の駅ビル地下にもそのタルト屋さんの支店を見つけ、何とも言えない気持ちになってしまうマリーであった。