14歳からの緊急事態? カエルおじさんと中3ひよこさんの対話
5月編“学校って何だ”
2020年4月25日(土)
2月の試験最終日にいきなり始まった休校が、今日で57日目です。この間、公立の中学校から電話一本ありません。課題のPDFが2回くらい、学校のホームページに出ただけ。中3の当事者はどう思ってますか?
こんなに長く続くとは思ってなかった。数週間で終わってフツーに3月に修了式やって、また4月から学校始まるよねって軽い気持ちでいたんだけども、延長が連続で決まって、さすがにもう、不安になってきた。
じゃあ、この状況は中学生にとって問題ですか。
勉強できないっていうのは大きな問題。子供は学校に行かなくても、課題を出しとけば自分で勉強できると思ったら大間違いだと思う。いちおう2年までの復習の課題とか出されてるけど、それだけやったってつまんないし、新しいことは勉強できない。このままいったら、どうなっちゃうんだろうって思う。
勉強と、先行きが心配?
学力だけじゃなくって、精神面も? 友だちと会えない、話せないって、結構つらい。そういうこと、あんまり深刻にうけとめられていないのかもって、ちょっと思う。
放っておかれている、という感じがありますか。
優先順位が低いっていうか、まず、もともと学校から真っ先に閉鎖したじゃない?
「なんか、軽く見られた」って感じたわけ?
すごくばっさり、みたいな感じだったし。それに、すごいびっくりしたんだけど、先生とかに全く相談しないで決めたんだよね? そのあとは、準備もなしにばたばたで休校して、それっきり。生徒に伝える前の段階で、先生たちに相談すればいいのにと思ったよ。
そのあとも、オンライン教育もないし、学校から電話もないね。
病院や保健所や介護施設の集団感染とか、重大な問題があって、今は学校どころじゃないのかな? 学校どころじゃないって言い方はしていないけど、余裕がないとか。そっちを優先してくれてもいいんだけど、さすがに、ノータッチすぎる感じがする。
ほったらかしなのは、大きな問題だと?
どうなるか、あまり考えずにいきなり休校って言って、対策や代案は考えてなかったのかなって思う。2月の休校のときだって、ここまでにはならないと思ってたにしても、2週間か3週間は休むわけだから、その間のこととかも何か考えてから言ってくれればよかったのに。
学校や子どもが、すごく軽く扱われてると感じてる?
なんでまずここからなんだって…なんども言ってるけど、そう思ったし。
休校宣言が出てから、「親が働きに行けなくなる」とかはすぐ問題になったけど、「子どもの教育が奪われる」っていう取りあげ方は、新聞とかテレビではほとんどなかったよね。何でなんだろうかって思ったけれど、一つには日本が高齢化して、子どもがいる世帯が少なくなったからかもしれない。
リアリティがもちにくい?
そう。あともうひとつは、もしかしたらそのもっと前から、社会にとって子どもの教育なんてものは、いい会社に就職するための選別手段だ、って以上の意味をほとんど持たなくなっていたからかもしれない。
だから学校に一斉に集まらなくても、プリント配って義務教育を終わらせる、でいいと思っている?
子どもにとって学びは大切だとかいう意見は、もっと昔なら、教育学者の人たちからもたくさん出たと思うんだ。今は、ほとんどそういうことが、いわれなくなっちゃったんだなあっていうのが、ちょっとショックだった。
この機会に話そう、みたいなことも全然ない?
教育の格差とかの話は出てきてるし、このさい日本の教育を改革しようとかいう話も出てるけど、そもそも教育は権利であるとか、学校に何の意味があるのかとかは、あんまり話が出てこない。それが、ちょっとびっくりしました。子どもが少なくなったっていうのもあるけど、日本社会は子どもに教育することの意味を見失ったのかなって、改めて思ったよね。学びはこどもの権利だとか、ちょっと前の教育学者は盛んにいってたよ。1960年代くらいまでの日本には、あきらかに教育を受けれられない子どもが、たくさんいたから。
ええ? それって結構最近じゃん。戦後じゃん。義務教育化されたあとも?
明治の最初から小学校をつくって義務教育にしたけど出席率は低かったし、学校にお金はかからなくても、親が貧しくて、おうちの手伝いや農業の手伝いをさせるために子どもを学校に通わせられないっていうのは多かった。
それが1960年代?
それは1920年代ぐらいまでが多かったかな。でも戦後に中学校を義務化して、中学校を建てて行かせろっていわれても、そんなに簡単には普及しなかった。1950年代でも、欠席率は地域によっては高かったです。漁村とか、東京の下町の工場地域とか、学校に来ない子どもたちがいることが大きな問題だった。
えー、義務教育じゃん。
もうひとつは、ある時期までは、戦争で勉強ができなかった人も多かった。中学生は勉強を中断して勤労動員させられたり、小学生は地方に疎開といって、教師の引率でお寺とかで寝泊まりしたけど、ほとんど勉強なんかできなかった。だからそういう人たちは、1960年代とかに大人になったあとも、それをずーっと後悔してて、大人になって本を読んで自分で勉強していたりしていたよね。