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『ひらけ!モトム』によせて

2023年5月、広島~江田島 世田谷に暮らす団塊世代の重度身体障害者・上田さんの旅

その0 の つづき

モトム、故郷に帰る

広島到着  編 

5月6日(土)  広島:雨

雨の広島駅から、あさひタクシーさんでリーガロイヤルホテル広島に到着。
モトムさんの車椅子をバックドアから降車させる際、スムーズに行かず、少々難儀。
車椅子のキャスターあたりをフックで固定してあった部分が、はずれにくかったらしい。乗車・降車の介助は運転手さんがおこなってくれた。介護タクシーの運転手さんは、介護福祉士か初任者研修済の資格をもっている。

ところで、介護タクシーとはなにかというと、車椅子やストレッチャーが乗れるような福祉車両に、単独歩行困難な乗客限定で運営する、道路運送法に規定されているタクシー。要介護認定された人は介護保険で利用することもできる。

車椅子でタクシー

ここは、後日、モトムさんに確認してみた。
――あさひタクシーさんは、介護保険で利用したんですか?

「通常のタクシー料金で払いました」

タクシー利用の障害者割引などについて、ちょっと調べてみると、国土交通省自動車交通局のガイドラインに、「公共的割引」を「身体障害者手帳を所持している者に適用するものとし、割引率は1割とする」とある、これかな。

――ふだん、モトムさんはタクシーを使うことってあるんですか?

「世田谷の場合はタクシー券というのがあって、それなりに利用できる制度があります。」

――なるほど。これですね。世田谷区「福祉タクシー券の交付」(「500円券は月5枚、100円券は月14枚です。申請月から支給。さかのぼって自動車燃料費助成への変更は不可」)

「ですが、それでも公共交通を利用した方が安いのでタクシーを使うことはありません。碓井英一さん*などが発起人になって、NPOで運営している「ミニキャブ区民の会」*という団体があり、けっこうそこを使う場合もあります」

碓井英一さん: 世田谷ボランティア連絡協議会の主要メンバーで「日本で最初にできた養護学校である光明養護学校(現・都立光明学園)出身の障害当事者。

世田谷ミニキャブ区民の会: 1981年に区の国際障害者年記念事業としてスタート、2000年にNPO法人。地域関係者の協議を経て道路運送法の登録を受ける「自家用有償旅客運送」登録済。利用者も運転ボランティアも会員制。料金はタクシーの半額程度。

「普段は90%以上は公共交通を使っています。立場が立場ですから(笑)。広島でも雨でなければ電車を使おうと思っていました。」

立場が立場(笑)――とは、これまでモトムさんが障害者の公共交通利用の権利に関して、人生を賭してどれだけ闘ってきたか、が、にじむご発言である。

 

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