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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

その3 Ching
(中学6年生,18歲 )

《Nomadland》が遠い地の物語だとすると、《放逐》が見せてくれたのは、まさに香港人の物語です。写真展は、3人のホームレスの住処の模型と彼らのプロフィールを展示し、プロジェクターで3編の写真シリーズを投影します。

1人目のホームレスは「雄叔*5」で、ヤクザ集団に加わったことで繰り返し刑務所に収監され、薬物依存がやめられません。最後は妻と子供に追い出され、街で暮らすことになります。2人目のホームレスは「阿Sing *6」で、ネパール出身で仕事のため香港に来て、同じく薬物依存になりました。3人目のホームレスは有名な「犀利哥*7」で、 元々は金融業界のエリートですが、都会生活に飽きて突然に職を辞め、全財産を使い果たしたあとで、ホームレスの仲間になりました。雄叔の物語は忘れられないものです。高仲明さんは雄叔が癌で亡くなる瞬間を記録しながら、自身が双極性障害に苦しんでいることを率直に語りました。

国際都市・香港の表面はまばゆく輝いて見えますが、その無数の橋の下に、雄叔のような香港人、阿Singのような外国人は、いったい何人いるのでしょう? この写真展がなかったら、同じ土地でこんなに苦しんで生活している人がいることを、私は知りませんでした。これこそが、芸術や報道の自由の重要性なのです。

人間の視野は一般的に180度しかないので、残る180度の情報を得るには、他者の協力を必要とします。香港の報道の自由は、中国返還以降、年々後退 し、自己検閲や、記者への攻撃が次々に起きています。2019年以降、さらに弾圧が強まり、今や公共放送の香港電台(RTHK)のトップは政府の意のままに交代し、民間企業の情報開示には厳しい制限がかけられました。報道の自由を妨げる、ますます心配な状況です。情報の流通が制限されれば、真実が隠され、市民に社会の様相を知らせることができません。

*5 「雄おじさん」という意味
*6 「Singくん」という意味
*7 「目つきの鋭いアニキ」という意味

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