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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

デモの風景。「香港加油」のコールの中で
小川善照

香港加油のコール、そして

日本の街頭で香港支援のデモが行なわれるようになったのは、2019年からだ。
その最初のデモは、6月9日、香港と時を同じくして行なわれた。これは、在日香港人の主催による、九段下での在東京香港経済代表部に対して行なわれた反送中デモだ。

実際に現場を取材したのだが、この時の参加者は80人弱ほどだっただろうか。在日香港人、香港人留学生、香港好きな日本人たちなどが、それぞれSNSなどの呼びかけで集まった。決して大人数が集まった訳ではなかったが、参加者の思いは純粋だったと思う。デモ終了後に、「香港の参加者は100万人だって」と、留学生の女の子たちは現地からの情報に狂喜していたことを記憶している。

この九段下のデモがマスコミで報道されることはなかったのだが、香港の100万人デモは日本の夜のニュース番組でも大きく報道された。翌日には周庭も来日して、日本人へ香港人が置かれている現状への理解を訴えた。
この後、香港では警官隊と、勇武派とよばれる実力行使も辞さないデモ参加者の激突が日常化し、催涙弾とバリケードの映像は、日本のメディアでも連日のように報道されるようになった。

市民はデモ以外にもさまざまな方法で警察や政府と対峙していった。合わせて、国際社会からの支持をえるため、香港人たちは積極的に海外への発信も行なった。クラウドファンディングで資金を集めて、大阪で開催されるG20にあわせて日本の新聞に全面広告を掲載した。
「自由のため、中国移送反対のため、香港の未来のため、皆さんのサポートが必要です。」
「私たちは、世界各国政府がG20サミットの会議上で、香港の問題を議題として取り上げてくださることをお願いいたします。」
新聞広告に書かれていたのは、香港市民からの切実な要望である。
そうした動きを受けて、日本人主催による香港支援デモもいくつか行なわれるようになった。

2019年の日本で、私が取材した二つのデモを紹介したい。
8月末、渋谷駅前でのデモを主催したのは日本の保守系の団体だった。「中国の侵略と人権弾圧を許さない」との横断幕があり、「中国の封じ込めを」などの言葉がスピーチでくり返された。渋谷駅前は、日の丸の旗を持った参加者で埋めつくされていた。

そして、9月に入り、新宿東口駅前でデモが行なわれた。こちらは、いわゆる「左翼団体」と言われる人たちが主催のデモだった。「香港加油」「香港に自決権を」とのコールに混じって「沖縄に自決権を」という言葉が入っていた。香港問題を日本の沖縄問題とリンクさせるという主催者側の意図が見て取れた。

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