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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

番外編    by   Age. I

不在、或いは空白に対する解釈権

2021年香港インディペンデント映画祭で上映された作品のひとつに『1944年の秋』*2がある。たった9分の短編映画ではあるが香港の歴史が凝縮されていた。言及すべきは「抗日」映画と解釈できる点だろう。

2021年12月13日、香港のある小学校では教育局が提供した教材に含まれていたとされる南京大虐殺の生々しい記録映像が上映された。

報道によれば、児童への心理的負担が大きく泣き出す子供たちもいたとされている*3。私は前述の映像を見ていない。しかし、香港における小学生への愛国教育という観点から指摘すれば『1944年の秋』の方が、心理的負担のみならずアイデンティティの統合という点からも適切のように思う。他方で作品の製作時期やこれまでの上映場所を踏まえれば異なるメッセージも姿を表すかもしれない。

1944年の秋、日本軍と対峙する「彼ら」に制作者は何を重ねているのだろうか。

結局のところ、それらを巡る真実は「制作者のみぞ知る」である。補足すれば、大概として表現されたものに対する解釈は受け手に委ねられているのである。香港国家安全維持法施行直後に掲げられた白紙のように。そして、私の解釈も「私のもの」でしかないし、それらを巡る真実も「私のみぞ知る」である。

*2 映画『1944年の秋』2020年製作。1944年の秋、日本軍に占領された香港で、イギリス軍の逃亡を手伝った香港の若者が一人の少女と出会うことで、彼の運命が大きく動き出す。(2021年香港インディペンデント映画祭HPより引用)

 

*3 関連する報道記事として:時事ドットコムニュース「南京事件教育、香港で強化 恐怖で泣きだす児童も」2021年12月13日20時40分 

 

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