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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

番外編    by   Age. I

「香港」は単なる名称ではない。そこでは多くの人が生きている。そして、様々な事情でそこから離れざるを得なかった人々も含めて「香港」に関係ある人々の数だけの立場があって思いがある。

単に「親中派」と一括りにされがちだが、中国本土との関係性の中で生きていかねばならない「普通の人々」もいる。また、香港警察に属している警察官だからといって皆が「魔警」という訳でもない。抗議活動に対して “ Kettling (包囲) ” といった命令に基づく鎮圧行動は警察官であれば従わざるを得ないだろう。

しかし、過剰な暴力を行使する同僚の警察官を必死になって止める警察官を幾度となく2019年の香港で目にしてきた。こうした様子は『時代革命』をはじめとしたドキュメンタリー映画でも確認できる。私事だが2度ほど抗議活動の現場で警察官に助けてもらったこともあった。とはいえ、香港政府の方針によって生活や生命の危機に追い込まれている人々からすれば、そんなことを言っている場合ではないことぐらい容易に想像がつく。

こうしたことに思いを巡らせていると、ただただ悲しくなる。

中途半端になってしまったが、今の私にはここから先は何も綴れない。しかし、息詰まってしまった時には感情に身を任せ対立構造で物事を捉えるのではなく、立ち止まりじっくりと考えを深めることや事物の構造的な問題を捉えることも必要なのではないだろうか。

どんなに嫌悪感を伴おうが、相手の言動を理解することで見えてくる世界や闘い方もある。あくまでも「私の場合」にしか過ぎないが。たとえ、非難されようがこれが今の私の視点であり考えだ。拙く、そして個人的な苦悩に満ちた言葉の羅列になってしまったが、誰かの何かを考えるきっかけになればと思う。

頻繁に警察と市民の衝突が発生していた旺角一帯。撮影日の前後も激しい衝突が繰り広げられていた。それでも、人々は「日常」を生きていかねばならない。そんな日常の一コマ。


寄稿・撮影:Age. I 2001年生まれ。小学生の頃にいじめを受け不登校に。また、これが原因となりPTSDに罹患。以来、自分自身を苦しめる「暴力とはなにか」を問い続ける。2019年民主化運動下の香港には2度の渡航、計3週間の滞在。

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