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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

翻訳者からのメッセージ
エスター

最近同じ学部の同窓生とキャンパスへ帰ったけれど、民主の女神像*はもういない、卒業した政治学部も吸収合併で消える寸前です。政治学部自体もこの時代状況におしつぶされ、私が大学時代にいちばん時間と努力をかけた政治学部のディベートチームも、もちろん生き残れない。すべてはついに歴史になるのです。

香港のこの歪んだ環境のなかにいることに加えて、自分の年齢のせいもあるかもしれないのですが、今、私の周りの人や物が失われていくスピードが――それらを手に入れるためにかけた時間と比べて、ずっと――速くなっているのです。これまで自分が積み上げてきた年月が否定されることが怖くて、何かを捕まえようとしても、自分を構成する大切な要素がくりかえし失われ、空っぽにされているのです。

偉大な人たちの人生も順調な航海などではなかった、そんなことは分っています。ならば、偉大でもなく平凡で非力な自分の人生が、思い通りにならなくたって、きっと当然なのでしょう。どうにもならない状況だらけ。そんな状況の中、今、正直に自分と向き合いたいと願っています。

自分と向き合い、思いきり笑い、思いきり泣くことが、どうかできますように。

* 2021年12月の「民主の女神像撤去」に関する記事はこちら
「天安門事件作品、各大学で撤去 香港大に続き」JIJI.COM(時事通信社)、2021年12月24日16時31分更新 /「天安門事件の記念像、さらに2大学が撤去 香港」ロイター、2021年12月24日4:23更新 香港中文大学で、天安門事件を象徴する「民主の女神像」が撤去された跡地に置かれた女神像の写真と花とろうそく(2021年12月24日撮影)。(c)Bertha WANG / AFP。(「世界の民主主義が後退、コロナ流行と権威主義台頭で」AFP/BB News、2022年2月10日 13:26更新) 

原文■ 譯者的話 Esther

最近與兩位大學同系同學重遊校園,然而民主女神像已不復存在,就讀過的學系亦即將因重組合併而消失。連學系本身都要被時代淹沒,自己整個大學時期投放最多時間與心思的學系辯論隊,自然亦不會倖存,一切終將成為歷史。

除了扭曲的香港環境,也可能是因為年歲漸長,人事物散失的速度,總是超越擁有的速度太多。很害怕過往的歲月會因而被否定,很想去抓緊些什麼,但構成現今的自己的部件,依然被多番掏空。

相當清楚就算是偉人,亦不是順風順水,平凡的自己力有不逮而人生未能如意,也是理所當然。只望我們都能在芸芸不可控之中學會誠實地面對自己、盡情地笑與喊。

 

正直、なぜシャッターを切ったのかは覚えていない。ただ無心でトヨタ製の小巴に揺られていたことだけは覚えている。いまや、そんな何でもない記憶ですら愛おしい。あの頃、肌身で感じた香港の何もかもが愛おしい。

記憶やアイデンティティ、法ですらも結局は単なる言葉でしかない。人の都合でいかようにも解釈されてしまう。昨今の社会で生きているとそのことを否が応でも意識させられる。当然だと信じて疑わなかった事物が凄まじい勢いで書き換えられてゆく。編集されてゆく。

言葉は常に意味の揺らぎを内包する。故に信ずるに値する事物など存在しないのかも知れない。しかし、その揺らぎは閉塞感漂う社会の可変性そのものだとも言えるのではないだろうか。言葉によって傷つけられた心が言葉によって癒されてゆくように。私はそう信じたい。

6月16日BBC NEWS「「香港はイギリス植民地ではなかった」香港の新教科書に記述」を受けて―― Age.I

撮影:Age.I 2001年生まれ。小学生の頃にいじめを受け不登校に。また、これが原因となりPTSDに罹患。以来、自分自身を苦しめる「暴力とはなにか」を問い続ける。2019年 民主化運動下の香港には2度の渡航、計3週間の滞在。

2019年12月 於開往旺角方向的深宵小巴內 (譯・Esther)

坦白講,我記不起為何按下了快門,只記得自己心無雜念地被豐田製的小巴搖晃著。如今,連那種甚麼也沒有的記憶也覺得可貴。那陣時皮膚和身體所感受到的香港的一切,通通都很可貴。

記憶、身份、甚至法律,結果也不過單單是一個詞彙,依照人的目的被任意詮釋。生活在現今社會,讓我無可奈何地意識到這一點。我理所當然地相信、毫不懷疑的事物,正在勢不可擋地被編輯、被篡改。

言語總是包含了詞義的變動。因此,值得相信的事物可能是不存在的。然而,這種變動也可說成是,在洋溢著死胡同感覺的社會中的可變性吧?願被言語所傷害的心,會日漸被言語所治癒。我想這樣去相信。

有感於 6月16日 BBC新聞《新版香港教科書稱香港不曾是「殖民地」》*1 ―― Age.I

*1 https://www.bbc.com/zhongwen/trad/chinese-news-61808011

攝影:Age. I 2001年出生。小學時期被欺凌,其後拒絕回校上課,並因而罹患PTSD。自此以來,不斷探究折磨自己的「暴力」到底是甚麼。在2019年兩度前往民主化運動下的香港,合共逗留了三星期

 


Esther エスター 日本留学経験あり、香港在住

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