難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-
番外編 2014~2019~2024年からの発信
小川善照 + トウィンクル・ンアン
進行 アーリック・リー
(つづき)
外からでこそ、声をあげる
小川 : これから先、監督は、新しい作品はどういうものを作られるんですか。
ンアン : そうですね――私は今も、イギリスで撮影を続けて、いろいろ記録していて、主にデモなどを撮影しています。香港の外で(香港の人たちに)何が起きているのか、記録し続ける必要があると思っています。
小川 : 本当に、そういう作業は大変だと思いますし、重要なことかと思います。それで、さきほどお話をした英国マンチェスターで活動されているボブさんも取材されたんですね。
私はボブさんにお話を聞いていて感動したんですけれども――彼は、香港理工大学*とか、そういった激しい現場にほとんど参加していて、警察との衝突の最前線にいた人で、その後、イギリスに逃れた人です。
* 2019年11月、五大訴求(逃亡犯条例改正案の撤回、抗議デモに対する「暴動」認定の取り消し、警察暴力に関する独立調査委員会の設置、拘束したデモ参加者の釈放、普通選挙の実現)をかかげ、デモ参加者数百人が複数の大学を占拠。とくに香港理工大学では警察の催涙ガスや放水に火炎瓶などで抗戦、強制排除されるまで激しい衝突が2週間以上続いた。
イギリスでもデモなどに必ず参加されている方で、2022年の10月16日にマンチェスターの領事館前で抗議活動をしていたら、なんと領事が出てきて(領事館敷地の)中に引き込んで、彼を殴って暴行したんですね。そのままだとまずいと、イギリスの警官が外に引き出して、事なきを得た人なんです。
その方は、「自分には学がないから最前線に出るんだ、あとに続く若い人のために」、香港市民として、未来のために自分のできる役目を果たしたいのだと語っていて、この人は本当に「勇武派」なんだなあと思いました。
私が2019年に取材したいろんな現場を、改めてこの映画で見せてもらえました。アップリンクさんでの上映期間が伸びたということですが、今年いっぱいぐらい上映していただけないかなと思います。
ンアン : 少しだけ補足させてください。先ほどのお話で、(マンチェスターの)領事館の話がでましたが、僕がイギリスに行った当初も、マンチェスターの中華街でそういうようなことが起きていました。だからこそ団結力を失わずに、「香港の外でさえも声をあげられない」ではなく、外からこそ、声をあげていくべきだと僕は思います。
小川 : なるほど。今回の映画は、常に最前線で記録されたものだと思いますから、日本の人たちにも強く伝わったのではないかと思います。映画からさらに広がって欲しいです。
雨傘運動以降、アップリンクが繋いだ縁
小川 : 2014年の雨傘運動当時、監督はどうされていましたか。また、監督ご自身が、現在支持されている政党などがあったら、お伺いしたいのですが。
ンアン : そうですね、雨傘運動の当時は、まだ動画撮影はしていなかったのですが、ずっと写真を撮影していました。最前線にもいましたし、雨傘運動の撤収のときも、全て撮影しています。撮影の他には、レノン・ウォールなどで壁に貼るもの(ポスターやステッカー)をプリントアウトして、みんなと一緒に貼ったり、そういう活動をしていました。
僕の政見(監督自身の政治的立場)についてのご質問ですが――、僕は1歳のときに福建省から香港に来ているんです。ですから、(大陸出身の)親戚や親とは、政見は全く違っていて・・・・・・ 親戚の人たちは政府の集会などを支持しますが、僕自身は(家族や出身にとらわれずに)自分の自由な意志で政治的立場を選ぶことが大切だと思っています。カメラを置いたときは、(事実を記録する撮影者の立場を離れているときは)自分の立場をあえて語らないことも、大切だと思っています。
小川 : なるほど。次の映画にも期待しています。最後に、上映会場のアップリンクさんの話をさせてください。
2014年の雨傘運動と2019年の香港デモの時に取材した写真が、今日もロビーで発売されている中村康伸さんの小さな写真集にまとめられていますが、このときに現地で中村さんたちが撮った写真と、現地の香港の人たちが撮った写真とで、2015年4月に新宿のPlaceMにて「香港雨傘運動写真展」(2015年4月27日~5月3日)として写真展を開いたんです。そのアンコール展を、アップリンク渋谷で「2014雨傘運動展」(2015年6月17日~29日)として、やらせていただきました。
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