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春 待つ こころ 障碍の児の思春期、ノート その4 堀切和雅

前回(第3回)の最後にちょっと触れたが、響が生まれる前の年、2000年に僕は編集者の仕事を辞めて演劇の教員になった。じつはそれも2005年に辞め、自分ひとりで出版社をひらいてまた本をつくりはじめた。

おかしな話だ。
かつて強く望んで入った、まっとうな本だけをつくろうとする志ある出版社での仕事に倦んでつかれて、決められた勤務時間は圧倒的に短く収入は過剰なほどだった正規教員に今度はなって、せっかくなれたのにその仕事に落胆して落伍し、再び本をつくろうとする。ひとりで勝手に。

そのひとり出版社も数年で刀折れ矢尽きたのだったが、あの本はつくれてよかった、つくづく、というものが幾冊かある。

それらの本を想えば、人からは迷走としか見えないだろう度々の職業替えもまた、よい巡り合わせでもあったんだと感じられるほどの、好きな本。

そういう一冊、臨床心理士の田中千穂子先生の『障碍の児のこころ』が、まさにここ、出版舎ジグから再刊される。2007年の最初の出版当時の、ほぼそのままで。
この本は古びることがないから。そしてこんなにも大切なことを丁寧にやさしく、当事者やその保護者や支援者と共に考える本は、なぜか、他にないから。

出版舎ジグからの新版に、僕は以下の「解題」(成立の経緯や本の存在の意味)のようなものを添えさせていただいた。

良い、善い本です。ぜひ手に入れて、読んでください。

「この本がいまも生きているわけ」へ

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