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春 待つ こころ 障碍の児の思春期、ノート その5 堀切和雅

結婚式は「やらない」か「やるならそれなりに面白くやる」のどっちかだと話し合っていたが結局後者になった。後者の「面白くやる」に決まると、劇団をつくって演出もし ていた僕は凝りに凝り出して年長者向けと若者向けの2部構成にしてしかも場所も変え、2会場連続参加の方のためにはバスを仕立てその移動のタイミングの完全を図るためヴェテランの舞台監督が無線できっかけを出す、という個人にはおそるべき規模にしてしまった。僕も連れ合いもまだまだ若く、働いていて、未来は測定可能な範囲以上に拡がってみえた、ということもあるだろう。

面白かったが、本題と外れそうなので詳しいことはまたいつか。

なぜ明治神宮だったのかについてだけ言うと、本殿周辺の広大な空間が、10万円で借りられると知ったから。担当の方が言うには提携貸衣装業者等の指定もとくにございませ ん、服装は全くの自由ということだった。
僕は思わず「と、ということはたとえばウ、ウルトラマンの格好でもいいんですね!?」と本当に聞いて確かめたが「問題ない」ということだった。

その年の10月15日。晴れた空は、青が目に染みすぎて痛いほど。本殿前の玉砂利の白い道を踏みながら歩く。黒の「お引き摺り」を着て和傘を差し掛けられた陽子さんはもともと顔立ちのはっきりした人なので、どこぞのお姫様というよりは例えば日本海側の古来の漁業集積地の網元の長女みたい。

インバウンドだとかまだ言われていない頃で、海外かららしい人はあっちに、こっちに、といるくらいだったが、そこから声援さえ飛んできた。
いや、僕ら自身が、こんなに佳く整えられた様式というのがあったんだね、と驚いていた。

ほんとうに、空が青い。
この青い空の下で、これからもなにもかもが起こるのだ。
それはその時にも想っていたことだろうか。いまだから想うことだろうか。

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