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『見飽きるほどの虹』によせて

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『見飽きるほどの虹』によせて

巣ごもり!アイルランド 小さな村の暮らし
オンライン・トーク再録

コロナウイルスのニュースが最初に入ってきたのは、2020年の年明けでした。
3月17日の聖パトリックの日のパレードを中止にすべきか否かで激しい討論がテレビで行われていたのを覚えています。恒例のパレードが中止になるなど信じられない思いで観ていましたが、その後状況が深刻化していきます。

アイルランドで最も大きな音楽のイベント、フラーキョール(アイルランド語で、その名も音楽祭)も、中止が発表されました。器楽、歌、ダンスなど年齢別のコンペティションを軸に、大規模なコンサートなどが企画される8月の祭典です。長い歴史のあるお祭りで、近年では海外からの参加者も増えてきました。

2019年のコンペティションでジュニア部門のバンドで優勝したタラケイリー・ジュニアバンド
ケーリーバンドのジュニア部門で優勝した、娘たちのケーリーバンド

フラーの全国大会は8月ですが、州の予選が6月、地方大会は7月。下準備に数か月かけるため、中止の決定も早かったのでしょう。娘は、15歳以下が参加するケーリーバンドのメンバーに選ばれていたので、2月には練習を始めていました。毎年、夏はフラーを中心に動いていたので、スケジュールが空っぽになった気がしました。

村の音楽祭、地元のミュージシャンたちは…

そして8月には、毎年開催される我が村フィークルの音楽祭もキャンセルに。

私の暮らすフィークル村は、アイルランドの伝統音楽が色濃く残る土地です。フィークルの伝統音楽祭は、小さい村ながらここ東クレアで最大規模。毎年国内外からお客さんが訪れ、村のパブでの連日のセッションや教会でのコンサート、楽器やダンスのワークショップなどをアットホームな雰囲気の中、楽しみます。

パブセッションの様子
フィークルのパブでのセッションの様子

アイルランドの音楽祭は、地方自治体や観光協会、ギネスなど企業の補助金で成り立っています。2020年は、開催中止でも、既におりている補助金でコンサートを撮影し、オンラインで流そうという企画が持ち上がりました。あまり遠くからはゲストを呼べない状況だったので、地元のミュージシャンたちが中心です。

フィークルの隣町タラから出発した、歴史あるタラ・ケーリーバンドも、フィークル音楽祭のためにオンラインのコンサートをしました。アイルランドの音楽は、基本的にダンス音楽で、ダンサーたちのために演奏する専門バンドがケーリーバンドです。タラ・ケーリーバンドは、全国的にも人気のケーリーバンドのひとつです。

タラケーリーバンドのオンライン・ライブ
タラケーリーバンドのバーチャルライブ演奏

私は普段、オンラインでライブを観ることなど滅多にないのですが、この時は彼らのコンサートをノートパソコンで見ながら、涙が止まらなくなったのを思い出します。(今見ても泣けてきちゃいますね)。アイルランド音楽の持つエネルギーと懐かしい顔ぶれ。当たり前だと思っていた私たちの穏やかな日常が奪われてしまったことが心の底から恨めしく、悲しかったですね。

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