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『見飽きるほどの虹』によせて 望月えりか

我が家に本が届くまで

今回出版舎ジグから出版していただいた私の本は、編集者さんが国際小包にして送ってくれることになりました。ところが、数日中に届くはずがいつまで経ってもその気配がありません。毎朝、郵便局の緑色のバンが来るたび「今日こそ」と期待を膨らませるも、配達担当のマーティーナはすました顔で封書の郵便物を投函していくだけ。1週間以上が経過した頃、いよいよ心配になってきました。これは、何かがおかしい?

編集者さんからのメッセージを読み返してみると、郵便で送られてくるというのは私の思い違いで、宅配便を使って送ってくださったことが判明。そのほうが速く届くかもしれないというご配慮をいただいていたんでしたっけ。

しかし、日本から海外向けに宅配業者を使った場合、荷物がアイルランドに着いたあとは誰が管轄しているのでしょう。さっそく編集者さんに、日本の宅配業者がアイルランドのどの業者と提携しているのかを調べてもらう間、私は村の郵便局のブライアンに訊いてみることにしました。郵便とプライベートの宅配業者はむろん別物で、場合によっては競争相手ともなるわけですが、ブライアンは届け先の不明な荷物を郵便局で預かったりと普段から個別に提携しており、各宅配業者の運転手たちとも親しいのです。

話が逸れますが、村の郵便局の電話番号は下三桁が100。これは、村で最初の電話が郵便局に来たことを示唆しています。個人宅に電話がなかった時代、アイルランドでは各町村の郵便局が電話の交換業務を担っていました。電話は緊急性の高い時のみ使われ、アメリカなどへ移民した家族や親戚の訃報も多かったことでしょう。通常業務に加え、昼夜を問わずかかってくる電話の交換業務も務めた郵便局のキティーは、数年前に亡くなりました。今ではキティーの息子ブライアンが、彼女と同じ穏やかな物腰で郵便の仕事を切り盛りしています。

そんな郵便局の番号をダイアルすると、すぐにブライアンが電話口に出てくれました。「あなたの管轄ではないんだけれど」という前置きのもと事情を話すと「追跡番号を持っているんだったら教えてよ。どの業者なのか調べられるかもしれない」ああ、こんなに頼りになる人もめったにいるものではありません。ブライアン、ありがとう。

フィークル村の郵便局の写真
フィークル村の郵便局

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