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jig - いま・ここで 青木麻耶

Nomadとノマドと旅する百姓

この車を転がして、早速九州に向かった。きっかけは福岡県の糸島市に住む中学生の女の子から、彼女が主催するイベントでわたしの旅の話をしてほしいと声をかけてもらったこと。その後大分で竹細工をし、五島では炭焼きをし、広島の安芸高田でお話会をし、京都でワークショップをし、伊豆では甘夏の収穫をし、山梨ではサンドイッチを売り、田植えをし… と訪ねた先でお手伝いをしたり、お仕事をもらったりしつつ、「旅する百姓」としてご縁とナリワイ作りの旅をしている。

 

奇跡のような再会もあった。広島県の尾道では、たまたま入ったお店の廊下を歩いていたら向こうからやってきた人に「あれ、まやたろ?」と声をかけられた。なんと3年半ぶりに友人とばったり再会したのだった。聞けば彼女は高知から鳥取に引っ越す途中で、たまたま尾道に一泊しようとしたところだったらしい。30秒でもずれていたらすれ違っていたであろう。そしてその流れでしばらく一緒に四国を旅することになった。四万十川のほとりで、そして高知の海を眺めながら焚き火で炙った鰹は絶品だった。車中泊仕様のサンバーは余裕で二人寝られることが実証された。

自転車と車ではスピード感も運べる荷物の量も全然違う。車での旅は圧倒的に便利だ。足先をちょいと動かしてアクセルを踏み込むだけで、全速力で漕いでも到底追いつかないスピードで走ることができるし、自転車で丸一日かかる距離をたったの一時間で進むことができる。

むき出しの自転車と比べて「動くおうち」の安心感はすごい。自転車旅をしていた時に屋根と壁のありがたみを日々痛感していたけれど、車にははじめからそれが備わっているのだから。雨が降ろうが槍が降ろうが、ずぶ濡れになる心配もない。

それでも時折自転車旅が恋しくなることもある。ペダルを踏み込み、風を切る感覚。上り坂の後の下り坂の爽快さ。1日を走り終えた後の心地よい疲れと、ビールの美味しさ。そして何よりも濃密な出会い。ガソリンにお金を払い、石油を消費している罪悪感に苛まれることも、駐車場に困ることもない。
要するにどちらも一長一短ということだ。

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