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jig - いま・ここで 青木麻耶

Nomadとノマドと旅する百姓

600Wのソーラーパネルで作られた電気はリチウム電池に貯められ、テレビや電子レンジ、エアコン、冷蔵庫なども問題なく動かせるし、30ガロン(114L)の水タンクを満タンにすれば4~5日間はシャワーも浴びられる。プロパンの給湯設備やディーゼルヒーターもあり、いつでも快適に過ごせる。こうした設備はすべて、バンにフィットするように切ったり調整したりしなければならない。2年以上かけて100%一人でやったというから驚きだ。

普段は24時間営業のスーパーやレストラン、州立公園などに停めているという。大抵は安全だが、2年半の間に3回ノックされ、そのうち一度は警察を呼ばれたこともあるそうだ。

フィデル曰く、家賃が高騰した西海岸、ことカリフォルニアにおいて、家を引き払って車に「移住」するという選択は年代を問わず珍しくないことらしい。

ぼちぼちのナルくんと話していた時に印象的だったのは、なぜ移動生活に区切りをつけてモバイルヴィレッジという拠点を作ることにしたのか、という点。

「バンライフって、自分ですべて賄えちゃってそれだけで完結しちゃうから意外と孤独なんだよね。だから次は人が集まる場づくりがしたいと思ったんだ。」
この彼のセリフが、バンライフをはじめる前からわたしは気になっていた。

自転車で旅をしていると、よく声をかけられる。特に南米ではすれ違う人たちがみんな挨拶をしてくれたり、時には水や食べ物を差し入れしてくれたり、ごはんをご馳走になったり、家に泊めてもらったり、とにかく人のあたたかさに触れることが多かった。そして良くも悪くも誰かに頼らざるを得ない場面が必ず出てくる。例えば何もない荒野のど真ん中で自転車が壊れてしまった時。暴風が吹き荒れてとても外ではテントが張れないような状況の時。ケガをして意識を失った時。そんな時に誰かが手を差し伸べてくれて、自分の弱さと人のやさしさを感じることができた。「人間は一人では生きていけない」と痛感した。

2ヶ月あまりのバンライフを経て抱いた感想は、やはりナルくんの言葉に近いものだった。バンライフは確かに面白いけれど、何かが足りない。それは人とのふれあいだった。

そういう意味でも、車中泊の快適性を担保しながら、仲間同士の連帯感を高め、情報を共有し、人との関わりをもつコミュニティを作り上げていくぼちぼちの存在意義はとても大きい。映画「ノマドランド」にも、書籍『ノマド』にも登場するボブ・ウエールズ氏(cheaprvliving.com)がはじめたイベント、RTR(ラバー・トランプ・ランデブー)もまた、同様の意義をもっている。車上生活者たちがアリゾナの砂漠で年に一度集うのだ。

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