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『ひらけ!モトム』によせて

上田さんの歴代介助者のトーク

その2

決してひとりで生きてきたわけではなく

及川:
「太陽の市場」でもこういう手法があるよっていう話が出て、実際上田さんとかから「障害者の問題を演劇ワークショップの中で扱えないか」っていう話が出て、太陽の市場の中で演劇ワークショップをやるっていう話になったんですね。

「太陽の市場」自体は、ここにちょうどパンフレットがあるんですけど、いろんな出し物、例えばみんなで楽器で音を出すとか、ケーキを作るとか、体にあった道具を作るとか、あとは写真を撮ってその場ですぐ現像するとか、いろんなイベントがそこで行われたんですね。あくまでも黒テントの公演もその中のひとつとしてやったんですね。最後、黒テントの公演『ヤクシャガーナ』っていう南インドの舞踏即興劇のときに、数日間の演劇ワークショップでできた作品なんかも公演したんですね。

岩下:
及川さんもそこに関わってらっしゃったんですか?

及川:
そうですね、私も参加者として。まだ私は劇団に入る前のお手伝いする段階だったので、黒テントの制作面から、その世田谷の中で上田さんたちとか地域の人たちと関わっていったっていう形ですね。

岩下:
そうするとどちらかというと参加者というよりは制作者という感じだったんですか?

及川:
あくまでも黒テントの制作のお手伝いという立場ではありましたけど、実際は太陽の市場の事務的な、裏方的な形で関わっていったという。

—障害のあるなしに関わらず

岩下:
なるほど。どうでしたか? 例えば上田さんが障害者の演劇をやらないかと申し込んだというふうに聞いているんですけど、演劇を一緒に作っていった過程とか。及川さんも参加されてたんですか?

及川:
私も参加してましたね。いくつかのグループに分かれて作品を作ったんですけどね。障害者の方の一日とか、細かいところまでは忘れましたけど。

岩下:
実際に最終的には観客の前で演劇をしたっていう?

及川:
そうですね。

岩下:
今振り返ってみて、どんな体験でしたか?

及川:
私だけじゃなくて、黒テントのメンバーとか、そのイベントに参加した人たちもみんな同じ、初体験だったんですね。上田さんもそうでしたし。ですからそこでの発見というのはすごく大きかったと思います。結局何も障害のあるなしに関わらず、話し合ってひとつの表現としてちゃんと成立するという、そのことの驚きと言いますかね。非常に大きな発見だったし、黒テントがその後いろんな場所で演劇のワークショップをやっていく中で大きな収穫があったんだと思うんですけどね。

つづく

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