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いただきもの おすそわけ 山内明美 その5

栗団子

- 青葉山採集生活・イノシシからのおすそわけ -

実は、この栗の木は、わたしの住まいのベランダから見下ろせる位置にあるので、お盆あけくらいから栗の木の実り具合を上から観察していたのである。9月に入って、どうもイノシシが来ていることに気がついた。それで、今年はこの栗の実を、イノシシに譲ることにして、時々様子をみていたのである。

この2、3日のうちに、はるか沖合いでの台風の影響で、大風と雨があって栗の実がだいぶ落ちたので、今日は日が差したタイミングで、ちょっとだけ栗をもらいに行ったんである。おやつの栗だんごをつくる分だけ、8つもらうことにした。あまりたくさん拾うと、栗の皮をむくのが面倒だという事情もちょっとある。

さて、本日の栗だんごレシピは、ちょっと独特で、だんご粉(上新粉)ではなく、小麦粉を使う。これは、わたしの祖母のレシピで、この季節になると、敷地の栗拾いをしてから、必ずこの栗だんごをつくってもらって食べていた。思い出の味なんである。

上新粉のだんごと比べると、小麦粉の皮は硬くてやぼったい味なのだが、栗だんごだけは、小麦粉でつくることが、宮城県北あたりの習わしである。その方がおいしいと、私も思う。

ちなみに、甘露煮や、瓶詰の甘栗を使う場合は上新粉でつくったほうがおいしいと思う。
今回の栗だんごレシピは、家に栗の木があって、生の栗の実でだんごをつくる場合には、小麦粉でつくるということだ。もちろん、スーパーで生栗を買ってつくってもいい。


私は広い範囲での郷土食を調べてはいないので定かではないのだが、今回の栗だんごの皮のみならず、宮城県北のあたりでは「はっと汁」など、小麦粉を練った“すいとん”を多用する。

このはっとに、甘いあずきをかければ、おやつの「あずきばっと」になり、豚汁や芋煮にいれれば「はっと汁」になる。あるいは、「たらし餅/たらし焼き」といって、これまた小麦粉と砂糖だけを混ぜて、クレープを分厚く平べったく焼いたようなおやつを食べる習慣もある。

だから、コメだけではない、味わい深い小麦の文化も東日本にはあるということだ。讃岐のうどんや大坂のお好み焼きばかりではないのである。南部地方へ行けば、煎餅文化もある。

それから、“すいとん”などの郷土食について、コメが食べられなかった時代や戦時中の食事だという論調もあるにはあるのだが、Rice Nationalismの研究者としては、「コメを主食」と捉えた文脈だけで多様な郷土食をばっさり切っていくということになると、どれもこれも「貧しい時代/貧しい地域の」とういう形容をつけることになってしまいがちで、当該の地域風土を基準に郷土食をとらえてほしいなと思う。

登米の「はっと汁」も食べてみて欲しいけれども、これはとてもおいしい。あ、いつか取りあげよう。ちなみに、登米市はこの「はっと汁」で、壮大な地域おこしをしている。「登米 無双」というPRアクション動画を観た時は、はっと汁でここまでやるんだなと思ったほどだ(現在は動画は非公開)。ゆるきゃらも「はっとン」である。


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