ジグ日記 | 出版舎ジグ

新代田と下北沢で 本屋さん

10年ほど前まで、京王井の頭線の新代田駅ちかくに住んで、会社~保育園@下北沢~自宅@新代田の三角形を毎日ぐるぐるまわしていた。下北沢~新代田は徒歩圏なので、育休中や休日は徒歩でぐるぐるまわっていた。

新代田駅改札の正面が環七、はさんで向かいに水泳教室プールの建物。
その1階のスーパーで生鮮食材調達、改札出て右にある図書館が資料調達の場だった。
図書館は上に児童館、その上に居住階が6~7層ある公団住宅=UR賃貸の建物だった。
(スーパーは今はライブハウスになり、旧公団ビルは居住階のない区民センターになった。)

ひっこして10年、まだご近所エリアと言えるので、徒歩で新代田や下北沢にいける。
ちょっとひさしぶりに新代田を経由して下北沢に行ってみた。

井の頭線は環七の下をくぐっている。
井の頭線を橋で渡り、その先の環七を渡ると新代田駅、という場所に、数年前まで文房具屋があって、ノートやシャー芯や付箋、子どもの折り紙やクレヨンを買っていた。奥には帳簿や会計用の文具、何種類かの紙や封筒もあった。

ここの店主が、いつもちょっと「あれ?」と目を引くフレーズ(道行く人を元気づけたり、するような一言)を、たぶん自身で手書きし、店の前や脇に掲示していたのが、いつもおもしろかった。そして、子どもが買い物に行くと、ガムをくれた、そういうお店だった。

その文房具屋が店をたたんで、そこが、ついこのあいだ、本屋になった。

これを知ったのは開店前の去年の秋で、下北沢B&Bで『ひらけ!モトム』のオンライン・トークイベントの打ち合わせるため、ひさしぶりに下北沢の本屋B&Bを訪ねたときだった。

本屋B&Bは、下北沢のごちゃっとした商店街の裏のビル2階→老舗パチンコ店の向かいの地下1階、から、地下化した小田急線の線路跡地に企画された空間に移転していた。そのB&Bのベテラン書店員さんが、新たな書店の立ち上げに関わってるんです、と教えてくれたのだ。

元文房具店の空間が、本屋さんに、しかもフェミニズム書店に。

「世田谷・新代田にフェミニズム専門書店 オリジナルグッズなど雑貨の販売も」 (下北沢経済新聞、2021年1月14日)、「フェミニズム専門書店、世田谷区代田に14日オープン」 (朝日新聞デジタル、2021年1月10日 10時30分)

コロナで入店制限しつつ開けていると聞いていたけれど、そもそも営業日は木・金・土で、日曜は休みだけど、歩いて前までいってみたくて、チラ見。ここにおいてもらえるような「フェミ」な本を、今年はつくります、必ず。

エトセトラブックス、シャッターがおりている
本日休業でシャッターがおりているエトセトラブックスさん

そのまま新代田駅でも電車に乗らずに、駅の右の坂を下って下北沢へテクテク歩く。保育園児を連れておたおた歩いていたころを思うと、近く感じる。

インドカレー屋さんが1階に入っている、古い3階建て「北沢ビル」をめざす。たしか耳鼻咽喉科の看板がかかっていた2階は、いま古着屋、3階は、これまた本屋さんになっていた。

出版舎ジグの最初の本、『見飽きるほどの虹』を、この本屋さんが置いてくれていると、あろうことか、アイルランドのフィークル村に住む著者、望月えりかさんから、Messengerで教えてもらったからだ。

いくつかの棚貸し書店さんの棚に出店している「ふわふわひつじ」さんのTweetを、えりかさんが見つけてくれたのだ。棚貸し書店さん!が! 盲点でした(それをフィークル村から教えてもらうとは)。

最初は井の頭線西口ちかくにあったお店だったそう、全く知らなかった。
(下北沢に住みたい人のためのWEBサイト)
「70店舗が集う棚貸し書店「BOOKSHOP TRAVELLER」が移転」」 

階段を上がり、6つあった部屋それぞれの棚(店子=棚子さんとかよぶのだろうか)の本の背をながめ、一番奥の部屋で『見飽きるほどの虹』を発見。

大型書店の棚に自分が作った本が並んでいるとき、学校図書館の棚に自分が編集した本が並んでいたとき、の感激とはちがう、ふしぎな感激。

できるだけ正確に言葉にするなら、
「本が動いていくルートのなかには、本がそれぞれに持たされている生命力で泳いで拓いていく空間や磁場もあって、そういう場に本を泳がせてくれる人がいるんだなあ」という感じ。ちょっと不正確な気もするけれど。

大きな政治や経済がまわることで生じる軋みと、それゆえの悲鳴があって、大音量のなかで届く言葉なんて発信できないやと思い、どこになら届き、どこを叩けば小さくても共鳴があるか手探りし、どの方向からなら響いてくるかと、目と耳で右往左往している間に、

ぜんぜん別の方向から響いてくる音に鈍感になっているかもしれない、と思った。
感傷的になぞなっている暇はない。細くとも繋がる縁に目と耳をこらしたい。

BOOKSHOP TRAVELLERの店主(棚主さん)は、『東京わざわざ行きたい街の本屋さん』の著者さんでもある。『街の本屋さん』東京版と全国版とを購入。サインしてもらい、しばし立ち話、遅ればせに名刺をわたしてご挨拶。

新代田でいろいろな気持ちをあらたにしつつ、フィークル村経由で下北沢にたどりついた1日で1月をしめくくって、明日から2月。

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