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『ひらけ!モトム』によせて

2023年5月、広島~江田島 世田谷に暮らす団塊世代の重度身体障害者・上田さんの旅

その2

モトム、故郷に帰る

江田島へ

5月7日(日) 広島:雨のちやや強い雨 江田島前夜

広島平和記念資料館からホテルに戻り、ひと休みののち、雨の中うろうろしなくて済むよう、今日も隣りのビルのレストランフロアへ。広島は広島焼きのほかになにがありましたっけ?牡蠣?穴子?とかでしょうか。ここはやっぱりお寿司にしようとなり、お寿司屋さんへ。

チャンさんが食事介助しているあいだ、二人のやりとりは掛け合い漫才コンビそのものになる。それを写真に撮ると、ラブラブの二人にしか見えない。この日のモトムさんはすこし、日本酒もいただいていました。

さて、明日の江田島行に同行できることになった『ひらけ!モトム』の著者、かつてモトムさんの泊まり介助をしていたイワシタさんが、パートナーさんと一緒にホテルの部屋を訪ねてきた。

イワシタさんとモトムさんの関係は、もちろん『ひらけ!モトム』に詳しく書かれているが、本が出て、イワシタさんが大学院生になり、社会人になり、結婚しても、交流は続いている。

本サイトの以下の記事も参照:「さよならは言わない」、「再会」、上田さんの歴代介助者のオンライントーク「決してひとりで生きてきたわけではなく」、選んだ仕事への思い「だから、ぼくは問い続けたいと思った

 

多忙ななか、江田島で合流できるか、ぎりぎりまで予定がたたなかったが、この機会を逃したくないと思ったそうで、ご一緒できることになった。明日は現地集合なので、合流の相談もかねて、今日はまずは、モトムさんの顔を見に来た。

イワシタさんが訪ねてくると連絡があったとき、モトムさんは実に、素敵に、嬉しそうだった。

や゛ っ っ た あ゛あー

(モトムさんが語るとき、喉や舌に込められる力や空気の感じを、イワシタさんは『ひらけ!モトム』で絶妙な字間スペースや濁点で表現した。こんな感じに、である)

母校の小学校の校長先生に、モトムさんはどうやって訪問の承諾を取り付けたのか、どのくらい時間を取ってもらえるかなあ、といった話や、イワシタさんの職場でのやっぱりいろいろある、という話を、するうちに、時間があっという間に過ぎる。

明日は江田島訪問後の帰りの新幹線が決まっているから、予定は結構タイトだ。朝は早くから始動するので、今晩は早めに休まなくては――といっているところで、モトムさんの今晩分の眠剤(睡眠導入剤)がないと発覚。

毎回の薬の分ごと袋にわけてあるから、回数分もってきたはず。朝に夜の分をのんじゃったか?朝食後の錠剤の数がいくつあったっけ?まさか朝飲んじゃった?いやそれなら日中寝ちゃってるはず・・・ たぶん、数え間違えて持ってきたんだろう・・・
だから眠剤のかわりに、

「ワイン、買ってきて、ください」

「白!」

とのご提案となった。

広島市内のホテルに一泊するイワシタ夫妻を送りがてら、ホテル内のコンビニでワインを探す。スパークリングなら小瓶があるけれど…

「あ、モトムさんは炭酸とか、ダメなんですよ」

嚥下でむせてしまうから。とのイワシタさんのアドバイスで、スパークリングを避けて、アルパカの白を調達して、お届け。夜勤介助のチャンさんに託して(私もコップに1杯おすそわけをいただいて)各自室に解散。

ぐっすり眠れますように。

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