モトムさんの旅を記録して
江田島同行からひと月以上経ってしまったけれど。
今回、車椅子で新幹線と福祉車両と路面電車と高速艇と低床バスを乗り継ぎ、母校に本を届ける人と一緒に旅する、という得がたい経験を、上田さんのおかげでご一緒させていただいた。
サイトの記事ではモトム帰宅、までは記録にしなかったものの、出発から帰宅までをつなぐ介助者さんたち、おひとりおひとり、職業・年齢・モトムさんとの出会いの背景、すべてそれぞれの個性があって、相互のさりげない、かつ敬意に満ちた連携も、印象深い経験だった。
旅のハイライトはもちろん、母校の小学校訪問。
校長室での会話をまとめさせていただきました→ モトム、故郷に帰る:江田島にて 母校訪問
多忙な校務をぬって、しかも給食時間に食い込んでしまったにもかかわらず、卒業生とその同行者をにこやかにお迎えくださった校長先生。この和やかな対話の時間には、安易に答えることの難しい問いも、きっとあったかと思う。記録とその公開をご快諾くださった江田島市立中町小学校の上本真理校長先生に、あらためて感謝申し上げます。
上田さんの訪問の意図は、校長先生にしっかり伝わったと思う。
本も読んでくださったそうで、訪問後に上田さんに届いた手紙には、「インクルーシブ教育のもたらすものの大きさを感じます」と。
一方で、上田さんの後日コメントにもあるとおり、小学生とモトムさんが直接に対話するような、ゲスト授業ができたらよかったなあ、とは、私も後知恵ながらも思う。『ひらけ!モトム』は、小学生にはすこしむつかしい。今後、どんな形でも、そういう機会や出会いにつながっていくことを願う。
さて、上田さんのコメントには、インクルーシブ教育、特別支援学校、特別支援学級への言及がある。
当日の校長室では、呉市にある特別支援学校の分級が江田島市にあること、ふだんは交流もあるけれど、コロナでなかなか難しくなったこと、などの話もあった。
校長室では、同行介助者の津留さんの、真正面からの問いかけもあった。
――同級生と一緒の小学校に通った経験が、上田さんの独立心や、人生を切り拓く力になっていると思う、特別支援学校や支援級ですごす今の若い障害者を見ていると、その違いを感じてしまうことがある、と。
この津留さんの問いは、校長先生にはどう響いたろうか。重く響いたか、あまりピンとこなかったか。
ひとりひとりの障害や個性に沿った学びが必要だからこその、現在の特別支援学校、特別支援学級だとのお考えだったろうか。
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