本を売る 鈍足編集兼営業担当と俊足著者 その2
本を売る… 9月に出版した『なないろペダル』は、8月末頃に刷り上がり、中央製版印刷さんから無事トランスビューの倉庫(前々回のジグ日記参照)に搬入、そのあとどう売られるかというと。その2(その1はこちら)。
『なないろペダル』は青木麻耶さんが北米~南米11,000キロを352日かけて自転車で旅した経験から生まれた。パーマカルチャーやオーガニックな暮らしのコミュニティや、中南米先住民の手仕事文化、体当たりな旅を助けてくれる実にいろいろな人の親切や家庭料理などなどが登場するが、そんななかでいつの間にか気づかされ胸打たれるのは、著者の「助けられる才能」の大きさ。
女性で、一人で、異国の地で、という状況に加え、「自転車」という手段の馬力や速度や見た目が、接近のしやすさ、信頼の置きやすさ、自力で進む姿への尊敬の念や侮れなさを発揮して、興味関心をひっぱる。
…に加えて、青木麻耶という人に「助けられる才能」があるとしか思えない。
もっと適当な言葉を使うなら、その人に関わりたいと思わせる力があるということ。
今のこの社会で、とくに必要とされる力ではないかと思う。努力して得られるのかは分からないが、それはどこから来るのだろう、まだ考えつづけている。
で、その青木麻耶さん=著者による本の販売の営業力が半端ない。
飛び込みで書店やカフェに営業して、「本の注文」をとるのは大変だろうと思っていたので、「営業は版元の仕事だから」と言っていた、その版元(=私)が恥じ入るほど。
一度に大量部数が売れていくわけではないのだけれど、2冊、3冊、ときには5冊や10冊の発注が、彼女が訪ねた先から入ってくるのである。
中山間地で農業関連のNPO法人でスタッフしていたフットワーク、「狩猟」や「手仕事」への関心で情報をやりとりする仲間、自転車や旅で積み重ねローカルに張り巡らされた友だち力、美味しい食べ物でむすびついた熱い信頼関係、飛び込み取材して仲良くなったお店、の応援などなど。何種類もの結びつきがある。
台風被災への支援もあっというまにそこに組み込んでしまうし、ちょっとしたスピンアウトの商品(なないろペダルてぬぐい)も、そこで生まれて一緒に運ばれてくる。
(この展開には版元なんぞの私は追いつけず、FB投稿で彼女の次を追いかける始末)
何種類もの結びつき、すばらしい。
見習いたいし、そうあるあり方をもっと学びたいものだと思う。
刊行から2か月たとうとしている今もお話会やブックトークのイベントがぞくぞく続き、そこで本をしっかり売る最強の営業かつ著者さんである。(版元も甘えずに参ります)
今後のトークの日程はこちら
11月24日の下北沢B&Bでは、イラストレイターの服部小雪さん(ハンターのお連れ合いでもあります)と、「旅と暮らしとおいしいお肉」で語る予定。
獲物の★肉や〇肉も、ご来客のみなさんに限定でお出しできるかも…とのことです。
詳細・ご予約はこちら
追伸:その服部小雪さんは、『地平線通信』486号(これってどこで入手できるんでしょう?)という、これも不思議で何層ものネットワークの産物らしいメディアに、『なないろペダル』のすてきなレビューを書いて下さいました。ちらっとだけ、画像。