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東アジアのクィア・アクティヴィズム 福永玄弥 その1

ソウルのクィアパレードから – 1

パレードのための準備リレー

2019年4月25日、冬の寒さがやわらぎ、ソウルに春が訪れようとしていた。私は韓国における性的少数者の社会運動について調査をするため、3月からソウル市内にある延世大学に滞在していた。延世大学は韓国で「クィア・スタディーズ」と題した授業を大学院生向けに開講している数少ない大学のひとつである。私はそこで韓国語を学びながら、ソウル・クィアパレードについて調査を進めていた。

同日の夜23時半頃、友人からメッセンジャーで連絡をもらった。彼女は大学教員で、やはりクィアパレードを対象とした調査をしていることから折に触れて貴重な情報を提供してくれるありがたい友人だった。

彼女のメッセージによると、ソウル・クィアパレードが深刻な問題に直面しているという。すぐにフェイスブックを開いてみると、パレードの公式ページには「サポート要請」と題した文章が投稿されていた。

「LGBTパレード」「クィア・パレード」「レインボー・パレード」など、その名称は国や地方によってバリエーションがあるが、世界の主要都市で性的少数者によるプライド・パレードが開催されている。東アジアも例外ではない。とくに東京やソウルや台北などの首都圏で開催されるプライド・パレードは、各国の性的少数者の運動の歴史が堆積する空間であると同時にローカルな政治経済状況を反映する空間としても興味深く、私は2010年頃より東アジアのパレードを追いかけてきた。韓国では2000年に「ソウル・クィアパレード」(서울퀴어퍼레이드, Seoul Queer Parade)がはじめて開催され、今年の6月1日に20周年を迎えようとしていた。

ソウル・クィアパレードは今年、行進ルートの拡張を計画していた。20周年を祝う企画として「光化門広場」をパレードの経路に含めようと試みたのである。

光化門とは朝鮮時代の王宮遺構として有名な観光地であり、光化門からソウル市庁へと続く光化門広場は「ろうそくデモ」に代表される韓国のデモ運動の重要な拠点としても知られる場所である。この光化門広場を含めることによってパレードは全長約4.5kmを超える長さとなるのだが、パレード組織員会はこのルートを管轄する3箇所の警察署に対してデモ申請をおこなう準備をしていた。

日本とおなじく集会やデモは警察署に申請するルールだが、韓国ではデモ実施日の1ヶ月前から受け付けが開始される。ソウル・クィアパレードの場合、6月1日の開催を目指しているため5月2日の早朝から申請が可能になる。パレードの妨害を目的とする集会申告も、行なわれる可能性がある。

優先的にデモ申請をするには申請の列の順番を確保しつづけなければならない。フェイスブックの「サポート要請」は、4月25日から5月2日の受け付け開始時刻まで3箇所の警察署で泊まり込みをするにあたり、サポートのボランティアを募集していた。24時間体制で現場待機できる人数が多ければ多いほど楽になるというのだ。

実際、〈保守勢力〉(詳細は後述)は2014年以来、ソウル・クィアパレードを中止に追い込むため多様な妨害工作を行っている。たとえば、パレードの進行経路での座り込みやダイ・インで行進を阻んで一時停止に追い込んだり(2014年)、警察署に対してパレードに先んじて集会申請してパレードの開催日を変更に追い込んだりしている(2015年)。ソウル・クィアパレードは、パレード当日はもちろん、準備段階から〈保守勢力〉との抗争を余儀なくされてきたのである。

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