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『ひらけ!モトム』によせて

2023年5月、広島~江田島 世田谷に暮らす団塊世代の重度身体障害者・上田さんの旅

その0 の つづき

モトム、故郷に帰る

広島到着  編 

5月6日(土)  広島:雨

広島の夜

広島到着1日目は、移動の疲れもあり、雨でもあり、まずは休む時間をとったのち、ともかく夕ご飯は食べよう、と、出かけたのが、広島お好み焼きの店。チャンさんは前日の夜勤の疲れを癒やし、このあとの夜勤にそなえるべく仮眠を取る方を優先したので、出かけたのは、モトムさん、ツルさん、と私の3名である。

「じゃけえ焼」という、濃厚ソース味のそば入りの広島焼と、ネギたっぷりの広島焼きと、あとはおつまみ餃子、だったかな。「じゃけえ」は、はたして正しい広島弁発音か、そんな話などしつつ。

 

ビールジョッキを傾けている、ツルさんのお話も、ちょっとだけ、聞けた。
本当は、もっとあれこれ話を聞こうと思っていたのだけれど、旅の最中は移動経路や時間がいつもメインテーマになるせいか、おちついてインタビューができず残念。いつかぜひ。

その、ちょっとだけ、聞けたお話によると、ツルさんのご両親は戦後、中国から引き揚げてこられたこと。千葉で息子のツルさんが(モトムさんと同じ1948年に)生まれたのち、東京の世田谷で暮らしたこと。満州では新聞記者だったお父さんが、帰国後は収入の多くない記者仕事をしていたこと、お母さんが洋裁仕事をいつも夜なべして、生活を支えていたこと、などなど。

モトムさんの、江田島でのご家族との暮らしや、当時の時代背景、その後に出会うお二人の話は、戦後・昭和の濃密な社会変化のエネルギーが実感される。

1980年代に世田谷区の羽根木公園で創作演劇に没頭した「アジア民衆演劇祭」という企画で、モトムさんとツルさんは出会っている。それ以来の運命共同体だということは、『ひらけ!モトム』で知っている。

さて翌日の広島平和記念資料館では、おふたりは、じっくり何を感じたのだろう。

広島平和記念資料館 編つづく

モトム=上田 要 うえだ もとむ 『ひらけ!モトム』の主人公、生活史の語り手。1948年広島県(現・江田島市)生まれ。78年より東京都世田谷区に暮らし、86年より24時間介助。自立生活実践中。

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