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何があっても 小林麻里

春の美しさに浸れるのも束の間。5月に入ると、気がつけばそこかしこに草が生い茂っており、草取りに追われる日々が始まってしまう。高冷地の飯地では畑仕事が本格的に始まるのも5月からだ。私も種まき、苗の植え付け、水やりと毎日忙しい。
もうのんびり散歩という訳にはいかない季節だが、夕方になってから食材探しを兼ねて歩いていると、ついつい家に戻るのが遅くなって悩ましい。
5月初めの森では、この地域で「コンテツ」と呼ばれているコシアブラ、今は湿地帯になっている田んぼではセリ、家の周り中に生えているフキも採れる。ワラビ、クレソン、三つ葉なども自生している。山野草の旬は短い。せっせと収穫して食べないと。

今年は3~4センチほどもある、大きな毛虫が大発生している。草むらにしゃがみ込んで山野草を摘んでいると、知らないうちに刺されていて痒いのなんの。
奴らにはクロと茶色の二種類がいるのだが、福島では黒い方を「毛だるじっじ」、茶色い方を「毛だるばっぱ」と呼んでいた。なんて言い得て妙なのだろう!
奴らはなぜか、せかせか、せかせか歩き回っている。いったいどこを目指しているのか、その必死な姿が憎めない。見るとゾッとするのだが、私は奴らが嫌いではない。

この春は水辺のガーデン造りにも着手した。水が豊富にあったころは溜池だった湿地帯に水生植物のコウホネが自生しているのを今年初めて発見。それを掘り起こしてきて家の東側にある池と田んぼの溜池に移植する。植木鉢に水生植物用の土を入れて植えつけ、上に小石を敷き詰めてから池に沈めるのだ。昨年の春に池に浮かべたホテイアオイは越冬できず枯れてしまったが、自生しているコウホネならばきっと大丈夫だろう。
それから憧れのスイレンも、これは買って来て、同じように植木鉢に植えて沈める。スイレンは飯舘村にあった池で毎年咲いていたから冬越しできるだろう。数日したら葉っぱが浮いて来た。その下にさっそくイモリが隠れている。
水生植物は自分たちが楽しめるだけでなく、池で暮らす小さな生き物たちの格好の隠れ家や休憩場所になる。沈めた植木鉢の縁に座って顔だけを出している蛙の姿には笑ってしまう。

水辺のガーデン造りの写真
生き物たちの楽園

ここ、岐阜県恵那市飯地町にすでに多く設置されているソーラーパネル。あらたに建設が計画されているメガソーラーを含む太陽光発電施設はまだ着工はされていないが、中止にもなっていない。水面下ではいろいろな動きがあるのだろうけれども、私たち一般住民には何も知らされないから、どうなっているのかわからない。もどかしいけれどもどうすることもできない。
そのもどかしさゆえに、こうして書いて発信しているのだ。

戦後の国策に従って、お金になるからと山にはびっしりと杉や檜が植えられた。植えたはいいが、その後安い外材が入って来て国産材は売れなくなり、若者は出て行って林業の担い手もいなくなってしまい、人工林は間伐もされず放置された。
価値を失い放置された人工林が売られ、メガソーラーになる。
飯地で計画されているメガソーラーも、その多くは不在地主によって売られた山林を皆伐して建設されようとしている。杉之沢という地区の市道68号線沿いに総開発面積19ヘクタール、出力約11メガワット、パネル数約6万7000枚に及ぶ規模で計画されている。その他の地区にも中小規模の計画がいくつもあり、それらをすべて合わせると同じく出力約11メガワットになる。もしもすべて実現してしまったら、飯地町はソーラーパネルだらけの町になってしまう。

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