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香港 あなたはどこへ向かうのか 番外編 阿古智子

アウくん、どうか一日も早く
日本で大学院の学業を再開できますように

四谷の須賀神社の絵馬の前でアウくん。香港民主派の元立法会議員で、現在、東京大学公共政策大学院の博士課程に在籍する區諾軒(アウ・ノックヒン)さん。1月6日、民主派の関係者50人以上が香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕され、アウくんもその中に含まれていました。この一斉検挙は、昨年7月、民主派が次期立法会選挙の立候補者を調整するために行った予備選が関係していると見られています。

アウくんは香港大学の戴耀廷元教授らとともに、予備選の準備・運営に参加していましたが、中国国務院香港マカオ事務弁公室、中国政府の出先機関である香港連絡弁公室が相次いで「予備選は国家安全維持法に違反している」と声明を発表した後の7月15日、予備選からは撤退すると表明していました。留学を予定していること、周りの人たちにかかっている圧力を考えての苦渋の決断でした。

アウくんは昨年11月から日本に滞在し、東京大学の授業を受けていました。アウくんが日本にいる間、私はしょっちゅうアウくんに会って、学業や生活の相談に乗ったり、一緒に食事したりしていました。

私はアウくんのことを、メディアや友人を通して昔から知っていましたが、初めて会ったのは2019年12月です。まだ立法会議員だったアウくんは、アウくんの事務所で事務補佐をしていた周庭さんとともに、立法会を案内してくれました。

立法会の建物の一部は、逃亡犯条例改正案に反対するデモ隊が7月1日に立法会に突入した際に破壊されましたが、12月には大半が修復されていました。しかし、依然デモは断続的に行なわれていたため、立法会周辺の警備は厳しく、出入口には巨大なポリエチレン製の緩衝バリアが設置してありました。

アウくんは、区議会議員などを経験した後、周庭さんが立候補予定だった補欠選挙で、周庭さんの代わりに立候補し、立法会議員になりました。周庭さんが立候補できなか
ったのは、選挙管理委員会が立候補を無効とする手続きを行なったからでした。周庭さんはその手続きは不当だと裁判所に訴えました。そして2019年9月、高等裁判所は彼女の訴えを認め、選挙管理委員会の手続きが不適切だったと判断したのです。

さらにその後、選挙管理委員会の手続きに問題があったということは、補欠選挙そのものが無効だと判断され、その結果、アウくんは議員の職を失いました。選挙管理委員会の不手際のつけを、こんな形で負わされるなんて、あり得ないことでしょう!

周庭さんと區諾軒さん
2019年12月6日、香港立法会内のカフェにて。周庭さんと區諾軒さん

2021年1月5日午後、東京から香港に向かう飛行機に乗ったアウくんは、香港到着後に長く待たされたあと検疫を受け、翌6日の朝4時に、コロナウィルス感染防止のための隔離施設に指定されたホテルに到着しました。疲労困憊し、荷解きも十分に終わっていない6時、警察はアウくんがチェックインしたホテルの部屋に踏み込み、アウくんを逮捕しました。日本から戻ってすぐにこんなことになるなんて、想像もしていなかったでしょう。

アウくんは昨年6月以降、すでに3度逮捕されています。

一つ目の罪は警官襲撃罪。恐ろしい罪を犯したように見えますが、アウくんの罪状は、デモを取り締まる警察官を拡声器で非難し、警察官の耳を痛めたということ。この時を振り返り、アウくんは「なんの冗談かと思いましたよ」と言います。これについては、140時間の社会奉仕活動が命じられ、アウくんは日本に来る前に、慈善活動の手伝いをしてきました。

二つ目にかけられた容疑は、議会の議事進行妨害。議事進行を妨害した罪というのは前例がなく、アウくんの弁護士も判断が難しいと感じているそうです。議事進行妨害と言いますが、議場を破壊したり、議員を殴ったりしたわけでなく、議論が白熱し、意見の対立が先鋭化したまでのこと。議会において当たり前のことをしているだけなのに罪になるのかと、アウくんは首を傾げていました。

三つ目は違法集会で、これは、2019年8月18日にアウくんも招集人の一人を務めていた民間人権陣線(民陣)が呼びかけたデモについてです。平和的、理性的、非暴力のデモしか行わないという理念を貫く民陣はこの日、銅鑼湾(コーズウェイベイ)のビクトリアパークを出発し、中環(セントラル)の方向へと人の流れを誘導する計画を立て、デモの許可を警察に申請済みでした。しかし、警察は途中で、中環方向での活動には「反対通知書」を出したため、増え続けるデモ参加者をうまく制御できず、一部は許可されていないエリアにも人が流れてしまいました。

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