〈自由〉の〈門〉をめぐる話 その2
行政と議会
関東大震災や空襲を免れ、戦前には無政府主義者の大杉栄やプロレタリア作家の小林多喜二らを収監した旧中野刑務所の正門。刑務所跡が法務省矯正研修所東京支所に、そして研修所が2017年移転した後も正門は残った。この敷地に建設予定の学校と、そこに残る門のあり方を問う、〈自由〉の〈門〉をめぐる話——その1を書いてから1ヶ月半が経過した。この間、〈門〉をめぐって大きな動きはなかったが、小さな歩みは着実に重ねている。「平和の門を考える会」は〈門〉のよい形での保存に向けて月に2〜3度会合を開き、地道に活動を続けている。
中野区は設計案の競争入札は行なっておらず、区指定業者に作成を依頼している。指定業者の情報は積極的には公開していないが、知り合いの議員を通じて問い合わせたところ、どの業者かを教えてくれた。そこで「考える会」の次のステップとして、保護者や区民からの提案を聞く場を設けるよう、設計案を作成した民間業者に要望書を送ることにした。
〇〇 ご担当者様
拝啓
貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
私どもは、旧中野刑務所正門(地元では通称として平和の門と呼んでおります。)の保存活用を願い活動している「平和の門を考える会」と申します。 本日は、貴社がご担当されている中野区立平和の森小学校の新築基本計画・基本構想(案)について、私たちの要望をお伝えしたく、ご連絡させていただきました。
本基本計画・基本構想につきましては、中野区の担当部署が1月31日、2月11日、2月14日に保護者や区民との意見交換会を開催いたしました。そこで、貴社がご提案された計画・構想に対して、主に以下の二つの点について懸念が示されました。このまま本案を変更することなく推し進めてしまえば、本校に通う生徒の交通や防犯における安全に問題が生じかねません。また、近代建築史において高い価値を持つと評価され、中野区が保存を決定した旧中野刑務所の正門と小学校の前向きな形での共存を阻害する恐れがあります。区から貴社に対して、どのような条件を出されているのでしょうか。地域に開かれた特徴ある学校づくりを目指す私たち保護者、区民の声をどうかお聞き入れいただきたく、本状を送付させていただきました。
要望書ではこのように前置きをした上で、まず問題点1として、業者設計の通学路よりも、現在使われている都下水道局管理の道路を使用する方が、事故防止と防犯の利点があることをのべた。意見交換会に参加した建築家たちは設計図を見て、そして、実際に敷地の周りを歩いてみて、どうしても腑に落ちなかった。これほど曲がりくねった狭い道路を、どうして通学路にするのかと。下水道局が管理する北側の道路は広く、まっすぐのびており、これを使わない手はない。そして、北側の道路を使うようにすれば、門と校舎の間の空間に余裕を持たせられるはずだと。