まあそれは、昔からあるよね。でも、なんとなく怖いから動かないでいるうちに、自分でも動けなくなるっていうのも、あるよね。
聞こうと思えば聞けるし、あと、聞いたからって別に点数が変わったりしないだろうけど。
行事や部活をやるともやらないとも言ってないんだから、こっちから働きかけるチャンスとは思わないの?
だってさ、とりあえず何か、学校から言ってほしいじゃん。
それはちょっと情けないですね。聞いてみるくらい、いいんじゃない。
やりたくなったらやるよ。
ええーと、今まで聞いた話では、学校では先生は方針めいたことは言わないで授業を始めてる、生徒たちも黙って受けている、そういうこと? それはあまり楽しそうじゃないね。
楽しそうじゃないよ。
君ら3年生だから、進路指導とか、そういう話あるはずだけど?
登校初日の1時間目が進学指導だった。都立の高校受験の方法はこうです、とか、私立の受験の方法はこうですって話をして、終わった。
それ、わかってる生徒は何割くらいで、初めて聞いたっていう生徒は何割くらいなの?
たぶん、とっくにわかってるのは4割くらい、初めて聞いたのが6割くらいかな。
その、初めて聞いた6割くらいの人は……。
たぶん志望校決めてないと思うよ。
先生方は、説明して終わりですか?
普通はこれを4月にやって、そのあと、志望校決めてる子は学校の特色をさらに調べてみましょう、っていう時間があったはずなんだけど、そこが全部消えてます。
それは君としてはどうですか? ①大変憂慮すべき事態だ。②チャンス到来。③何も考えない。
①じゃないの。チャンス到来ってなにさ(笑)。
抜け駆けできるとかさ。
それはないよ。でも、6月なのに志望校未定が6割はやばいと思うよ。高校って、その後の人生の、仕事とか、大学とか、かなり関わる話だから、その準備ができてないのは、将来ノープラン状態で突っ走ってるようなものじゃん。学校も、休校中の3月4月時点で、「塾探しとけ」とか「志望校決めとけ」とか、フォローできないなりに負け惜しみでもいいから生徒に言っておけよって、ちょっと思うけど。
負け惜しみって?
だって、考えれば分かる話じゃない。例年なら、2年生の3月には「受験について真面目に考えよう」って話が出て、第一志望合格とか、推薦合格した卒業生の体験談を聞くんだけど、それがなくなった。春休みに考えて、塾に入ったりして、4月に受験方法、5月のあたまに志望校を考えるっていうのもなくて、やっと受験方法の話をしたのが、6月だよ今。8月には三者面談で志望校を決めて受験勉強を始めるって段階なのに。
気になる友達います?
いるけど、どうフォローしていいのかわからない。
部活仲間の情報交換とかないの? 先輩が後輩にラインで定期試験のアドバイスしてるらしいじゃない。
学校の試験なら助け合ってもいい気がするけど、受験って、完全に個人の話になっちゃうから。
受験するのは個人だけど、受験のしくみは税金の申告みたいなもんなんだから、みんな共通のはずですけど?
親から志望校決めろとか言われてストレスだって子も多いはずだし、学校の友だちにまで言われたくないって思うよね。そういう話は同級生より、信頼できる大人と話したいよ、私だったらね。
塾ではそういう話する?
塾でもいろんな話するけど、ものすごく馬鹿馬鹿しい話。