jig - いま・ここで
Nomadとノマドと旅する百姓
映画と本の重要な登場人物である実際のノマド、リンダ・メイが「アースシップ」を作りたいと土地を探し続け、本の中ではついにそれを手に入れたことも書かれている。
アースシップとは、古タイヤや空き缶、空き瓶などの廃材と土やわらなどの自然物で作られた、冷暖房なしでも年間通して20度前後を保てるように設計されたオフグリッドな家のこと。電気は太陽光や風力で発電し、水は雨水をろ過して使う。
ニューメキシコ州の建築家、マイケル・レイノルズ氏が1970年代から実験的に建て始め、今では世界中でおよそ1500棟が建設されている。数年前に徳島県にも日本初となるアースシップが作られたそうで、わたしも近々訪れてみたいと思っている(徳島県美馬市、Earthship MIMA)。
学生時代にヨーロッパを自転車で周った時に、デンマーク郊外のエコビレッジを訪ねたことがある(Økosamfundet Dyssekilde )。そのエコビレッジもアースシップのような作りで、家の半分は地中に埋まり、草屋根がふかれ、サンルームの大きなガラス窓から降り注ぐ光がとても暖かく、心地よかった。
車上生活というのは一見自由に見えるけれど、ガソリン代やら保険やら車にお金がかかる以上は、完全に既存の経済や社会のシステムから離れることはできない。ましてやそのお金を捻出するために巨大企業の末端で働き続けるのであれば、皮肉にも資本家から労働者が搾取されるという構図は変わらない。
そういう意味で、オフグリッドな家に住み、衣食住とエネルギーを自給するという試みは、資本主義社会からの自由を手に入れるための、そして人類がこの地球上に生き残るための、究極の答えのように思う。リンダが車上生活の果てに見出した答えは、ある意味人間の真理をついているのかもしれない。
そして、一つのところにじっとしていられないわたしもまた、気軽に移動できる自由さや便利さを楽しみながらも、心のどこかで自分の「帰る場所」を求め続けているのだ。