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『ひらけ!モトム』によせて

2023年5月、広島~江田島 世田谷に暮らす団塊世代の重度身体障害者・上田さんの旅

その0

モトム、故郷に帰る

出発 編

旅の提案から出発まで(つづき)

モトムさんは、居宅で昼間介助、夜間の介助、外出時の同行、など、時間交替で複数の介助者シフトをくんで、24時間介助をいれた自立生活を営んでいる。

『ひらけ!モトム』 には、モトムさんがそうした生活を築き上げるまでの歴史が語られているが、自身も立ち上げにかかわった、自立生活センターの「ケアズ世田谷」のほかにも、介助者の登録・派遣サービスを担う事業所を利用している。

ケアズ世田谷も、世田谷区から委託されている指定事業者で、『ひらけ!モトム』の著者であるイワシタくんは、その登録介助者だ。

「ひねもす」のオオデさんとモトムさんの付き合いも30年以上になるという。オオデさんの前職は出版社の営業さんだったこととか、モトムさんとの出会いとか、聞き始めたら止まらないストーリーがあるようで、話をききたいなあと思いつつ、その日は手続きモトムさん宅に打ち合わせもあるため、長居できずにおいとました。

   >> 話をもとにもどす

今回のモトムさんの広島旅行に同行する介助者は3人。

まず、日中の介助者であるツルさん。そして、夜間の介助者であるチャンさん(介護福祉士でALSなど難病の在宅夜勤介護が専門。タロットなどを駆使する占い師の顔ももつ)。ツルさんとチャンさんは、基本的には、朝9時/夜7時を境に昼夜シフト切り替えで入れ替わって主たる介助者になる。旅行中なので、日中介助者が移動介助も行う。食事や着替えなども、それぞれの時間内で介助する。

3人目の参加者が私。<モトムさんのライフヒストリーをモトムさんの介助者だった大学生が書いた卒論を本にした編集者>で社会福祉士資格もある。

3人目が必要な理由は、旅行中は移動以外にもさまざまサポートがある方がいいから。日中介助者のツルさんは、モトムさんと同い齢のずばり団塊、今年から後期高齢者の75歳。熟練で、モトムさんと互いを知り尽くしている無二の介助者さんだが、陸路・海路ふくめ移動距離の長い旅は、体力勝負・時間勝負。もう一人くらいほしい。

加えて、この広島旅行には、大事なミッションがある。
そのご縁で私も召命に預かった。

広島県広島市、瀬戸内海の江田島に今もある、モトムさんの母校の小学校を訪問し、モトムさんのライフヒストリーを綴った本『ひらけ!モトム』を、校長先生に対面・手渡しで、届けにゆくのである。

この旅を思いついて、小学校に電話して、日取りをきめて、校長先生のスケジュールまでおさえてもらって、母校訪問を決めたモトムさんには、驚きの敬意しかない。驚きの敬意と道中への心配を共有する3人が、以下ご一緒する。

こうして事前に受け取ったスケジュールは――

5月6日(土)  新横浜駅集合。10時18分発のぞみ129号11号車椅子席12番A、B、C(車イス)、おなじく11号車9番B、C。
7日(日) 14時から、タクシーで平和公園(原爆資料館)。帰りは17時の予定。
8日(月) 11時、中町小学校訪問・図書寄贈。15時18分、広島駅発のぞみ36号11号車11番A、Bおよび8番A、B。18:57、新横浜駅着 解散。

ところで、数日前から、天気予報はなやましいことになっていた。

 

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