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『ひらけ!モトム』によせて

2023年5月、広島~江田島 世田谷に暮らす団塊世代の重度身体障害者・上田さんの旅

その0

モトム、故郷に帰る

出発 編

5月6日(土) 世田谷:快晴やや強風 広島:雨 

 

今、そうすべきとは思わないのは、人の心が冷たくなって期待できないから、ではなくて、「偶然の道行く人」より「社会全体」が、「たまたまに」ではなく「当然に」、手伝うしくみを用意すべきであるから。

そして、手伝う人の労力や技術に、それなりに報いる(有償の仕事として担う)べきであるから--その方向で、社会の価値観が、ゆっくりとでも、変わってきているから。

駅ビルや路線の構造は相当に複雑になり、その情報や課金はスマート化し、さらに、「社会インフラはバリアフリーが当然」という価値観が、ある程度には定着し、エレベーターやスロープも、あるにはある(あるところには、ある)、それが現在。
車椅子対応をしっかり教育された駅員さんの力量を無駄にすべきでない、とも思う。

障害者の「敵」は親と役所と駅員、という感覚だった数十年前とは、隔世の感だ。

それでも。

「ゆっくり進みます」は、「急いでいないです」ということではないし、「スピード最優先ではありません」は、「後回しにしていいです」ということではない、ということは、まだまだ共有されにくいのかもしれない。

バリアフリーが進むより早く、みんながさらに忙しくなった、ということなんだろう。

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さて、モトムさん一行。
それなりに早めに家を出たはずが、エレベーターの前で15分あるいはもっと、電車ではなく人を待つことになり、田園都市線から東横線経由で新横浜の新幹線に間に合うのかが微妙になってきた。

乗り継ぎ連携の駅員さんたちのナイスな連携で、東横線にはうまく乗り込めた。JR新横浜駅に移動、新幹線きっぷうりばでは、あらかじめ電話予約していた指定席特急券を受け取る。やはり、それなりの行列。コロナ明けGWだから。ここはもっと計算に入れておくべきだった。

きっぷを受け取って、すでに発車15分前。
台東区から夜勤明けでやってくるチャンさんが来ない!
まだ移動中らしい。そもそも夜勤明けの朝から広島同行でその日の夜からまた夜番介護!と驚いているのは私だけ?らしく、それにも驚く。

LINEと電話とメッセンジャーを駆使していつ合流できるかな〜とハラハラしていると、今度は、みどりの窓口職員が2人ほど追いかけてきた。

清算が2人分しかできていないので、、、、という。戻ってもう一度支払い手続きの必要あり。えーっ!と言っているうちに発車3分前を過ぎ、「…間に合わないですね」ということで、イチから席の取り直しとなった。チャンさんはこのタイミングで合流。何らかの神の采配であろう。予定修正:新横浜駅、10時48分発、のぞみ25号。

車椅子対応の個室ブースに案内されて乗り込んだモトムさんとツルさんは、他2名の知らぬうちに個室ブースを脱出して、一般の指定席に移動していた。

離れた席からの、モトムメッセージ:

今乗務員が来て、檻房から11号車の12番ABに席を変えてもらいました。」

檻房・・・ 息が詰まるということですね、モトムさんらしい。

件の個室がベットのように使えることを広島到着後に知った夜勤明けのチャンさん、「それ、早く言ってよ(私が寝ればよかった)」

 

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