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いただきもの おすそわけ 山内明美 その5

栗団子

- 青葉山採集生活・イノシシからのおすそわけ -

山猫からもイノシシからも便りは届かないが、青葉山は栗の木がばらばらと実を落とす季節だ。

すきとおった風がざあっと吹くと、栗の木はばらばらと実を落としました。一郎は栗の木をみあげて、「栗の木、栗の木、やまねこがここを通らなかったかい。」とききました。栗の木はちょっとしづかになって、「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」と答えました。「東ならぼくのいく方だねえ、おかしいな、とにかくもっといってみよう。栗の木ありがとう。」栗の木はだまってまた実をばらばらとおとしました。(宮沢賢治、「どんぐりと山猫」、ちくま文庫、p18)

青葉山にはいたるところに栗の木があって、そのほとんどは天然の芝栗(山栗)だ。芝栗は小粒なのでわざわざ採集とまではいかないのだが、なかには植林した(と思われる)栗の木もあり、こちらはとても大きくて立派な栗がなる。聞くところによると、大学職員間での、若干の栗争奪があるらしい。なんにせよ、栗の実は、早い者勝ちである。私はそれとは別に、誰も気に留めない住まいの敷地のなかに栗の木があるので、そちらの栗を拾いに行くことにしている。

だが、今年はいつもの年とはまったく様相が違っている。以前も書いたのだが、このコロナ渦で、全学入構禁止となったことで、あまりにもキャンパスが静かなせいか、青葉山の動物たちがキャンパスのなかを堂々と闊歩するようになっているのだ。それから、山の奥の方で開発工事がはじまっているという影響もあるかもしれないのだが、つまり、写真に撮ると、こんな具合だ。

よもや間違われる方はいないと思うが、この栗の皮は私が食べて捨てたのでもなければ、私がこの場所に寝転がったのでもない。これは、イノシシたちの仕業である。栗の皮をみておどろいた。彼らはこんなに器用に、硬い栗の皮からおいしい中身だけを上手に食べているのだ。どうやって歯を使っているのだろう、どうやって皮から実をとりだしているのだろう。その詳細は、私には謎だ。きっと詳しい人がいるに違いない。


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