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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

「人が法に奉仕する」のか
阿古智子

張同学さんが紹介している人物のうち、呉靄儀について少し解説しておこう。

呉靄儀は大律師(バリスター、法廷弁護士)で元立法会議員。彼女は、2021年4月16日に行われた裁判で、2019年8月18日の抗議集会を無許可で組織したなどとして、民主派の元立法会議員ら9人とともに有罪判決を受けている。ちなみにこの時、李柱銘は11ヶ月(執行猶予2年)、東京大学の博士課程に在籍している區諾軒(アウ・ノックヒン)は禁錮10ヶ月の判決を受けている(参照「アウくん、どうか一日も早く 日本で大学院の学業を再開できますように*7)。

彼女が弁護士としてのキャリアをスタートさせたのは40歳になってのことだ。ボストン大学で西洋哲学の博士号をとり、銀行で勤めたこともあるが、すぐ嫌になってケンブリッジ大学で法律を学ぶことにしたという。香港の代表的英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』でコラムを書き、弁護士になってからもすぐには法曹界で働かず、中国語の日刊紙『明報』で副編集長を務めるなど、メディアで活躍した。呉靄儀は中国語圏で絶大な人気を誇る金庸の武侠小説の研究者としても有名だ。このような経験を生かして、彼女は一般の人にわかりやすい言葉で法律を伝え、コミュニティの法律サービスを充実させることに尽力した。彼女は「私たちの世代は、主権が変わった後に香港の自由と香港独自のスタイルを維持する方法を見出すのに必死だった」と述べている。

呉靄儀はこのようにも言っている。香港人は平和を愛する、規律を守る人たちだと。100万人を超える大規模なデモを平和裡に行なえるのだから。8月18日も雨が降る悪条件の中で、人々は「平和、理性、非暴力」を貫いた。キャリーラム行政長官はこの2日後、平和的なデモは市民と政府の間の対話を促進するプラスの効果があると述べている。平和的にデモを行うことがなぜ犯罪になるのかと。

呉靄儀は4月16日の裁判の陳述で、こう述べた。

「私は法曹界に遅れて入りましたが、法の支配のために奉仕してきました。法曹の聖人であるトーマス・モアは、王の意志に従うために法を曲げたくはないと、反逆罪で裁判にかけられました。よく知られている彼の有名な最後の言葉を少し変えさせてもらいます(以下のように宣誓します)。『私は法のしもべです。法は何よりも人に奉仕しなければならない。人が法に奉仕するのではありません』」

中国においても、「法の支配」“rule of law”を浸透させようと努力している人たちがいる。しかし、共産党の統治が絶対的な前提である「国家安全」を前に、香港に国家安全維持法が施行され、権力者が支配の道具として法を使う “rule by law” が広がりつつある。呉靄儀が述べたように、香港にも「人が法に奉仕する」時代が到来したのだろうか。このようななかで、法律を学ぼうとする若者たちが戸惑うのは当然のことだろう。

*7 このエッセイの中国語訳を掲載していた「立場新聞」は、2021年6月のリンゴ日報が廃刊に追い込まれた事態を受け、同年5月以前の投稿をウェブサイトから削除し、中国語訳が読めなくなった。現在、出版舎ジグのサイトにあわせて転載している。

■中文■ 人民是否應臣服於法律

在張同學介紹的人物中,讓我就吳靄儀作一些補充說明。

吳靄儀是大律師及前立法會議員,她於2021年4月16日舉行的審訊中,被控於2019年8月18日組織及參與未經批准集結,與包括其他前立法會議員在內的其他8名民主派人士一同被判罪名成立。同案的李柱銘被判入獄十一個月,緩刑兩年;正於東京大學修讀博士課程的區諾軒就被判入獄十個月。

我曾於Jig出版社網站投稿回應區諾軒被捕的事件,中文譯文亦曾於《立場新聞》刊登。然而,受2021年6月《蘋果日報》停刊事件影響,《立場新聞》把同年5月前刊登的評論文章全部暫時下架,該譯文也包括在內。現時該文章的中文譯文於Jig出版社網站重新轉載:〈阿區,祈求你能早日重新開始在日本的研究院學習〉(中文譯文於第二頁)

吳靄儀的律師生涯是於40歲時開始的。她在波士頓大學取得哲學博士學位,亦曾於銀行工作,但因很快便厭倦銀行的工作,轉而到劍橋大學修讀法律系。吳靄儀於香港標誌性的英文報章《南華早報》上撰寫專欄,在取得大律師資格後亦沒有立即於法律界工作,而是在中文日報《明報》中擔任副編輯,活躍於傳媒界。她亦以風靡華語圈的金庸武俠小說的研究者身份廣為人之。有賴這樣的經驗,吳靄儀以顯淺易明的詞彙向一般市民講解法律,致力完善社區的法律服務。她如此說道:「我們這一代人,費盡全力尋求在主權移交後,維持香港的自由和原來的生活方式的方法。」

吳靄儀亦指,香港人是熱愛和平及非常守秩序的,因為超過100萬人以上的大規模遊行也能狂和平中舉行。8月18日群眾同樣是在下雨的惡劣環境下,貫徹「和平、理性、非暴力」的宗旨。吳靄儀認為,林鄭月娥在兩日後表示會馬上構建對話平台,亦是確認了和平示威會有利政府與公眾的對話,和平地進行示威為何卻被指是犯罪呢?

吳靄儀在今年4月16日於庭上的陳詞中,這樣說道:
「雖然我較別人遲進入法律界,但我一直以來都為法治服務。Thomas More是法律專業的至聖,他不想為了服從國王意願而扭曲法律,因此被判叛國罪。容許我稍為修改他著名的遺言,:我是法律的忠僕,但我首先是人民的公僕。因法律應該侍奉人民,而非人民臣服於法律。」

即使在中國,亦有致力推動「法治(Rule of law)」的人們。然而,在以共產黨的統治為不可改變的前提的「國家安全」下,維護國家安全法在香港實施,當權者以法律作為統治工具,「以法而治(Rule by law)」越來越普遍。正如吳靄儀所說,香港大概迎來了「人民臣服於法律」的時代吧?在這種情況下,有意修讀法律的青年有所困惑,是理所當然的吧。

“香港カーブ”で名を馳せた啓徳空港は、英国の置き土産として計画された新空港の開港に伴い歴史に幕を下ろした。現在は跡地の再開発が進んでおり、その片隅には滑走路と飛行機を模したモニュメントが佇んでいる。私には香港人の真意はわからない。けれども、香港返還は少なからず実りある未来に思いを馳せたものではなかったのではないだろうか。なぜ、こんなにも恐怖の絶えない*8 場所へと変貌してしまったのだろうか。その思いは、同世代の香港人の赤裸々な声を知るたびに深まるばかりである。――Age.I

*8  「香港に栄光あれ」の歌詞はこう歌っています:何以 這恐懼 抹不走(なぜ恐怖を消そうとしても消えないのか)。

撮影:Age. I 2001年生まれ。小学生の頃にいじめを受け不登校に。また、これが原因となりPTSDに罹患。以来、自分自身を苦しめる「暴力とはなにか」を問い続ける。2019年 民主化運動下の香港には2度の渡航、計3週間の滞在。

■中文■

以「香港Curve(比喻飛機於啟德機場升降時的飛行路線,因需要避開山丘及大廈等障礙物,飛行路線轉彎迂迴)」馳名的啟德機場,隨著作為英國政府臨別禮物的新機場啟用,在歷史中正式落幕。機場原址現正進行重建計劃,在那個角落佇立著以跑道和飛機為藍本的雕塑。我不明白香港人的真正的想法。雖然如此,香港回歸不是應該遘向非常光輝的未來嗎?何以變成了這般抹不走恐懼的土地呢*?那種念頭,每當聽到相同世代的香港人赤裸裸的聲音時,都不斷加深。――Age. I

* 此處引用了《願榮光歸香港》的歌詞—「何以 這恐懼 抹不走」。

攝影:Age. I 2001年出生。小學時期被欺凌,其後拒絕回校上課,並因而罹患PTSD。自此以來,不斷探究折磨自己的「暴力」到底是甚麼。在2019年兩度前往民主化運動下的香港,合共逗留了三星期。


Esther エスター 日本留学経験あり、香港在住

あこともこ 現代中国研究、社会学、比較教育学

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