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どら猫マリーのDV回想録 その6

魔除けの指輪(話は少し、さかのぼる)

さて、そんな頃、お小遣いもくれるのに娘に毒親扱いされている母が、私にそっと指輪を手渡した。貴金属は魔除けになるから。そんなようなことをつぶやきながら。

週末は子連れでお出かけ、それでも月曜日には早起きして出勤モードでしたくする私の姿に、何か思うものがあったらしい。実家の整理をして出てきたものを磨きなおしたとのこと。

古臭いけれどシンプルなそれを、私ははめて通勤した。祖母は手が節くれだっていたから、私には大きすぎて中指にはめて仕事をした。

「磨いてもらうときにサイズも変えてもらったらよかったね」と母は言った。でも、はまらないわけではない。せめて迷信でも、不器用な娘を守ってほしいと思う母が私は哀しかった。

私の仕事は福祉系の支援員だ。石が飛び出したデザインでもないし、職場の主任は、「それくらいなら危なくないしいいんじゃないですか?」と承諾してくれた。指先がキラキラするだけで気分が違った。そうだ、私はきれいでいい。そういわれているみたいだった。そういう意味では確かに魔除けになる。嫌な空気がなくなるような気がした。そんなある日、

「マリーさん、結婚指輪でもないのに何で指輪しているんですか? 利用者がけがでもしたらどうするんですか?」

真面目な職員さんから指摘を受けた。でも一瞬でその人の顔がこわばった。さすがにプライベートに入り込みすぎたと思ったのだろう。「結婚指輪」は余計だったはずだ。「指輪はケガにつながりませんか?」だけでよかったはずだ。

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