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どら猫マリーのDV回想録 その6

魔除けの指輪(話は少し、さかのぼる)

実は、新しい職場はわりと家族的で、私は居場所を見出せたような気がしてほっとしていた。私にも仲間ができたかもしれない、と。

夕方になると職員の子どもたちがランドセルをしょって「帰宅」して、何となくみんなでそれを見守る。子供好きな職員はわざわざ自分の車まで行って、そのために用意したおやつの袋を配ってみたり。私は、お古をいただいて、私もお古を上げたりした。「いちご狩り」も職場の行事の一つ。家族ぐるみで週末集う。マイクロバスは大型免許を持つ施設職員がかわるがわる運転した。

「うちもシングルマザーですから」なんて、こっそり声をかけてくれる人もいた。
私は勝手な親近感を得た。思わず事情を話してしまったりして。

でもどうだろう、その人の薬指にはきらきらと輝く結婚指輪があるじゃないか。どうやらご主人は夜勤のあるお仕事らしく、自宅で顔を合わせることがない、ほかのご家庭のように保育園のお迎えを分担したりすることがないという意味だったらしいのだ。

私は拍子抜けした。やっと見つけた仲間。でも相いれない何かを勝手に見つけては、悲しみに沈んだ。

そういえば、今日は何日だろう。「1日」の映画割引を逃すわけにはいかない――なんて、今は気にしなくていい。どうせ行けはしないんだもの。「おでかけ」はポーとエリーと私の「探検」と呼んでいた。ある時は海の底に、ある時はジュラ紀、白亜紀に、ある時は絵本の中に。美術館や博物館の涼しさと、外に出たときのかき氷のおいしさと。

都会の喧騒とお土産のキーホルダーを握りしめたエリーの寝顔。大好きな電車で目を輝かせてそらすことのないポーの横顔。

漢字は駅名の看板を利用して覚えた。これからどんな「大好き」が待っているのだろう。どんな「素敵!」があるだろう。どんな「すごい!」が待っているだろう。きっとそこに、習うべき習い事のヒントだってある。何でも始めてみるもよし、でもきっと才能はほっておいても開いてしまう花なのだと思う。親が焦らなくても本人たちがもつべきものだ。

摘もうとしないかぎり、きっと花開く。

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