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どら猫マリーのDV回想録 その7

ニシキヘビ

実際、私も疲れていた。スマホをいじりながら、電気毛布で温まったベッドに入る。
至福のときだった。

夫が帰宅した。そして次の日のお昼くらいに、子どもたちを迎えに「はもに」の家に行く。黒焦げのやかん。「お湯を沸かしたの忘れて寝ちゃったのよ」と酔いの冷めた姑は言う。いや、違う。冷めていない。「何? 何か文句あるの? 馬鹿にした顔で見てるけど。」と絡みだす。こうなると何を言っても駄目だ。そして「あんたが育てたからじゃないの? 出来が悪い子どもたちだ」と続く。

私は、もう子供を預けるようなことはしないと誓う。思わずそう口にしてしまって、車中の雰囲気が悪くなる。子ども部屋に隠れる、2人と私。食べ物やスマホを準備して。別居する。今度は、酔っぱらった夫が同じように顔を出す。態度が悪い、と言いながら。

「あのう、私が寝かしつけますから」がいいかしら。「すみませんが、子どもと一緒にいる時間帯にお酒飲まないでもらえますか」っていうのもいいのかしら。関わらないでほしい。でも、断り方がもう分からない。その、おばあちゃん愛みたいなもの。かといって、2人の面倒を看る覚悟なんて、私にはない。さぼれるものならさぼりたい。

うまく動けない。保育園があるといっても時間は短い。職を得ることもできない。

暴力は、相手が動けないと分かった時に始まると、誰かが言っていた。そんな言葉がよみがえる。どうせ逃げられないから、肥大する。相手の、支配。
私も不安。なのに子どもたちは私だけを信じ、頼る。呼吸が荒くなってくる。

電化製品もすべてそろって、夏は済州島旅行に行った。
新築のマンションに住む家族の日常がよみがえる。
「優しかったよ、アッパもハルモニも」と、私は慌ててフォローする。

私たちは幸せだったに違いない。そう信じたい。話しかけてはみるが、ポーはタブレットにご執心。やり取りはまだまだ下手なポー。対話にはなりにくい。やっと聴き取って、やっと語彙が増え始めている。

「あーあ、小しゃいころはパパに怒られて」
ここで、エリーが参戦。エリーはうらやましいのだ。自分以外の家族に父親の記憶があることが。記憶なんてない方がいいのに。

「エリーは覚えていないでしょう」と笑って答えると、彼女はむきになる。
「覚えてるもん!」
彼女にとっては、今の方が機能不全家族なのかもしれない。みんなの家にいるはずの父親というものが、どうやら我が家にはいない、ということが不自然と感じているようだ。

 

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