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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

デモの風景。「香港加油」のコールの中で
小川善照

川崎駅前のデモ/ヘイト

日章旗、旭日旗が舞う中、香港の民主活動家・周庭の写真に「#Free Agnes」「周庭に自由を」と大きく書かれているプラカードも見える。それを高く掲げている人物は険しい顔で正面に集まった人々をにらみつけている。その前にいる、マイクを持つ男は「すでに川崎の治安は崩壊し川崎国が現出」などと意味不明の言葉を吐き続けている。これは、川崎市が在日韓国朝鮮人に乗っ取られているという妄言だ。聞くに堪えない内容だが、数日前から日本人の主催団体によって予告されていた「政治活動」だと主張する。

この日、数人の弁士が差別的な言説を駅頭で放っていた。その男らの言葉をかき消すため、駅前に集結した人々から「レイシスト帰れ」という激しい罵声がくり返されていたのだ。参加人数は抗議者のほうが圧倒的に多い。差別をまき散らす男たちは包囲された状態だ。一触即発にも見える双方の間には、警官隊が入ってじっと警戒している。
今年2月のある日曜日の昼下がり、川崎駅前の風景である。

たまたま居合わせてしまった駅の利用者たちは眉をひそめて足早に去っていく。
混乱の中、申請したデモの時間がすぎると、警察官に守られながら「レイシスト」と罵倒された男たちは去って行った。
――残念だが、ここ数年何度となく、川崎市でくり返されてきた風景だ。

聞くに値しない理屈を吐き続けていた男は、過去には東京都からへイトスピーチ認定までされているヘイト活動家だ。周庭も香港も、この男の活動にとっては、自らのヘイトを正当化するツールにすぎないようだ。激突寸前に見えるのは、この街宣活動を阻止するために集まった人々がカウンターデモをしかけているからだ。そこで発せられる言葉は、双方ともかなり汚い。

その動画を見た在日香港人は涙を浮かべながら肩を落とした。
「香港をこんな形で利用しないでほしい」
「本当に反吐がでる」
この日、現場を偶然見かけた人たちからすると、まるで周庭や香港に対して、駆けつけた人たちが抗議をしている形にさえ見える。この街宣活動に対して、好意的な意見を持つ日本在住の香港人を私は知らない。

 

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