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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

デモの風景。「香港加油」のコールの中で
小川善照

支援する側の問題

2019年の日本の、この二つのデモには、香港人の参加が一人もなかった。渋谷では日本人と台湾人、新宿は日本人のみで行なわれていた。
参加はせずとも、これらのデモの現場に足を運んだ香港人もいた。渋谷のデモでは、「日の丸がずらっと並んでいるのを見て、写真だけ撮って帰りました」という。また、新宿のデモでは「そこに参加すると、日本政府の沖縄政策に、私たちが反対しなくてはならないのかと思った」という。

結局、香港人たちの目には、これらのデモは、それぞれ主催者たちの政治的主張に香港問題を結びつけたデモに映ってしまうようだ。

香港は第二次大戦時に日本軍に占領されている。その時の記憶は香港の暗黒時代として香港市民に記憶されており、尖閣諸島問題などで香港の民主派が行動を起こすモチベーションでもある。日本好きな香港人であっても、軍国主義的な日本への反発はかなり強い。また、日本で長く生活する在日香港人にとっては、外国人が沖縄問題という日本の国内問題に巻き込まれるのは「好ましくないこと」であると感じているようだ。

香港人が日本人に求めていたのは、新聞広告の通り、日本政府としての支援だ。
この年に大阪で開催されるG20で、その議題として、出席する習近平に突きつけてほしい、ということだった。結果として、議題とはならなかったものの、当時の安倍首相は、習近平に面談した時に香港問題を持ち出し、「香港は自由な繁栄が必要」と懸念を示した。

当時、このことは香港人たちを勇気づけた。国際的な世論を味方につけることは、香港人の戦略でもあり、生命線でもあった。だが、残念ながら、現在まで香港問題について日本政府が具体的な制裁措置などを行なってはいない。

香港を支援したいと思う人の政治的信条は、人それぞれだろう。保守であれ、リベラルであれ、各自の信念に基づいて香港を支援しているのであれば、私は基本その信念の是非を論じるつもりはない。
だが、冒頭のレイシストの行動だけは、問題外である。自由と民主主義を信じる人であれば、とうてい看過できるものではないはずだ。私は絶対的に否定する。

ANIBOU氏は、旭日旗に象徴されるナショナリズムによる香港問題へのコミットに疑問を感じている。実は、その疑問は「支援する側」のさまざまな問題の根本でもある。

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