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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

デモの風景。「香港加油」のコールの中で
小川善照

(つづき)

2021年も終わろうとしている現在、香港は平穏に見える。
デモも抗議活動も聞こえてこない。それは平和をとりもどしたのではなく、国家安全法という強権で沈黙を強いられているに過ぎない。

踏みにじられている香港市民の人権のために、日本から声をあげること、それは同時に日本人として人権を考えることでもあるはずだ。もちろん、そこにヘイトスピーチや旭日旗は必要ない。

周庭は、2019年に自分のツィッターで、デモの最中に壁に落書きされたと思われる日本語の言葉を紹介していた。

「他人の自由を否定する者は、自らも自由になる資格はない」

民主主義は、個の尊重から始まる。自由と民主主義、その実現を一貫して訴えて続けている香港市民にとって、この言葉は重い。
もちろん、香港市民を支援する人にとっても、この言葉は忘れてはいけないものだろう。

寄稿:おがわ よしあき  ジャーナリスト。2014年の雨傘運動以降、香港の取材を続ける。
著書に『香港デモ戦記』(集英社新書)。

 

ある個人の嘆き

机が机であり続けること。大学が大学であってこそ机は机たり得る。
大学が大学であり続けること。人が人であってこそ大学は大学たり得る。
人が人であり続けること。社会が社会であってこそ人は人たり得る。
私は問う。社会とはなんなのだろうか。
如何なる主義や思想の下で運営されていたとて、
その本質は「万人の万人に対する戦い」から逃れるためのシステムではなかろうか。
表象としての暴力に主義も思想も国家も人種も存在しない。
ただ、人間でありたいという想いがあるだけだ。
―― Age.I

撮影:Age.I  2001年生まれ。小学生の頃にいじめを受け不登校に。また、これが原因となりPTSDに罹患。以来、自分自身を苦しめる「暴力とはなにか」を問い続ける。2019年 民主化運動下の香港には2度の渡航、計3週間の滞在。

*注 写真のタイトル「Outside the Yellow Brick Wall」は、映画「理大囲城」(香港ドキュメンタリー映画工作者、2020年)の英文タイトルに呼応する。2019年11月、重装備の警察に包囲された理工大学キャンパスに11日間籠城したデモ隊の記録。山形国際ドキュメンタリー映画祭2021で大賞を受賞。


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