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難以言喻的香港生活所思 ―香港の現在、言うに言われぬ思い-

デモの風景。「香港加油」のコールの中で
小川善照

香港と日本の民主主義のため

チベットやウイグルでの中国の人権弾圧について、「人権を守れ」と活動をしているある人物は、在日外国人の参政権については「絶対反対」を唱え、現状の入管の難民申請には、「もっときびしくすべき」とさえ言う。この人物は、保守と自称しているが、戦前回帰さえ口にしているようだ。つまり、人権という言葉が、反中を唱えるための、便利なツールになっているのだ。

国家安全法施行以降、香港では声をあげることができなくなった。
そのため、日本にいる香港人たちは、現地の人々のためにも、声を上げ続けている。

その国家安全法には「外国勢力との結託」という、海外に向けての活動自体を取り締まる項目がある。日本でデモに参加している香港人たちは、香港に戻ると逮捕される可能性があるため、すでに香港に帰らない覚悟の香港人もいる。日本で難民申請することが現実味を帯び始めているのだ。

難民認定基準をきびしくすべきと主張する前述の人物は、デモの現場で、こうした在日香港人たちとの面識もある。彼らに対して地方参政権や難民申請の問題を、どう語るつもりなのか。

本エッセイ冒頭の川崎駅のレイシストは、現在、在日香港人主催によるデモでは、一切の参加を断られている。在日香港人も、彼がレイシストであることを認識して拒否しているのだ。
だが、香港人が参加するデモに、この男の姿と、その独特のプラカードが見られることが時々ある。それは、日本人の主催によるデモの場合だ。香港人団体は、そのデモに賛同しての参加であるために、主催者が認めた参加者に対して、文句は言えないのだ。

本来的に、人権問題を訴えるデモの主催者としては、レイシズムや排外主義に対して寛容であってはならないはずだ。レイシストと一緒に人権問題を訴えることはありえない。旭日旗に懸念を感じるANIBOU氏は、過去に侵略を行なった旗を掲げて人権を訴える姿に拒否感を感じたのだろう。

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