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春 待つ こころ 障碍の児の思春期、ノート その6 -1 堀切和雅

関係性のなかで、どの人も意味を帯び、やがて言葉だけではない交流の裡に、なくてはならないひとになる。

雑誌編集者として河合隼雄さんの連載の担当をしていたころ、氏はよく「コンステレーション(星座)」という概念について語っておられた。星座は、ソリッドな物体として
「ある」わけではない。しかし人の心にとっては視え、存在し、個々の星と星との位置関係は、いやむしろ位置関係こそが実際に意味を持つ。

星座からある星が欠けたり視えなくなれば、それはまた別の星座になってしまわざるを得ない。そして星座は太古から変わらないように思えるかも知れないが、長い時間のなかで変化していく。

変化した星座は、ときに他の星座と繋がり、離れ、やがてまたその全体が新しい物語として読み替えられる。

この連載の2回目に、1回目を読んでくださった方からの声をさっそく引用させていただいたのだった。

「響さんが就学後、どのように歩まれたのかにとても興味があります。言葉は適切かはわかりませんが、ご著作のなかでいくつもの『快進撃』で驚くべき成長をされてきた響さんのこと、これからの連載でさらに知り、そしてじぶんごととして見守らせていただきたいと思っています」

そう。まさに「快進撃」と呼びたくなる嬉しいこともあった。

だがそれは努力すればするほどに、必ずもたらされるというものではなかったと今はおもう。もっと人間の心の、心と心の関係の、知識ではなかな摑めないところから起こってくる。そのような気がする。

 

その6-2につづく

ほりきり かずまさ はじめ編集者、つぎに教員になり、そうしながらも劇団「月夜果実店」で脚本を書き、演出をしてきた。いまや劇団はリモートで制作される空想のオペラ団・ラジオ団になっている。書いた本に『三〇代が読んだ「わだつみ」』『「30代後半」という病気』『娘よ、ゆっくり大きくなりなさい』『なぜ友は死に 俺は生きたのか』など。

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